地震保険改定への異議申立とやりとり

11月28日に地震保険改定の届け出を損害保険料率算出機構が行い、それに対して全国建設労働組合総連合旭化成建材株式会社が異義申立をしたことが2月12日に公表されました。
その時のことは、2/12に「地震保険改定に異議申立」でちょっと触れましたが、この時点では異議の内容がまったく不明でした。
今般、その内容について明らかにされました。また、異議に対する損保料率機構からの反論も展開されています。さすがに、日経新聞の記者に踊らされるほど、愚かな内容ではありませんでした。
地震保険の基準料率に対する異議の申出にかかる意見聴取調書」
http://www.fsa.go.jp/news/20/hoken/20090323-3.html
金融庁 報道発表資料 2008.3.23)
↑のリンク先の添付ファイルの数を見れば分かるとおり、資料の数はかなりあって短時間では見切れないほどです。
今回の意義申立に対して、金融庁は以下のとおり論点を整理して、この論点に沿って意見聴取を行いました。
【全建総連】

論点1 地震保険の基準料率の区分を2 区分としているが、これは妥当か。
論点2 地震保険の基準料率上の区分は、原則として、火災保険の参考純率上の区分に準拠しているが、これは妥当か。
論点3 今般の火災保険及び地震保険の料率改定において、「木造軸組工法建物」と「枠組壁工法建物」の耐火性及び耐震性に関し、異なる保険料の区分としているが、これは妥当か。

旭化成建材

論点1 地震保険の基準料率上の区分は、原則として、火災保険の参考純率上の区分に準拠しているが、これは妥当か。
論点2 今般の火災保険及び地震保険の料率改定において、「外壁ALC 版木造建物」の耐火性及び耐震性に関し、従来の安い保険料区分から高い保険料の区分に変更しているが、これは妥当か。
論点3 今般の火災保険及び地震保険の料率改定において、「枠組壁工法建物」について、省令準耐火に該当しないものも含め、従来の高い保険料区分から安い保険料の区分に変更しているが、これは妥当か。

中身は結構なボリュームなので割愛しますが、私が感じたのは以下のとおりです。
早い話が、全建総連が作っている木造軸組工法建物がロ構造なのが気に食わないということのようです。だいたい、この場に日経新聞といった保険に関しては3流の新聞の記事を持ちだしてきているあたりで、私としてはダメだなと思うんですが。
旭化成建材も同様です。こちらの主張ははっきり言って見苦しい点が目立ちます。自らの扱っている ALC を火災保険・地震保険において有利に扱って欲しいという意図が透けて見えるせいではないかと思われます。発言を見ていても、自分たちの常識は世間でも知られていて当然だろうという言い方で殊更不快に感じます。
 
料率が過去の実績を元に信頼できるレベルの量の統計から計算されているなら、たかだか2,30年前に出た建築手法が直ちに地震保険の料率に反映されるべきであると主張するのは愚の骨頂だと思います。日本は地震国と言われますが、さすがに統計を取るのに充分なだけの地震がしょっちゅう起こっているとは思えません。
地震保険創設からの経緯の資料を読めば分かりますが、ある程度の合理性を持たせつつ低廉な保険料で運営が可能なように火災の料率体系と連動させています。もしも、そこを地震独自の料率体系にしてほしいと思っているのなら、建築業界がすべての居住用建物について無料で耐震性能評価等を行って、その結果を無料で漏れなく交付するべきと考えます。
もしも、その耐震性能評価等の結果と実際の地震被害に明確な相関関係が認められれば、耐震性能評価等の結果と料率体系をリンクさせることができます。また、それができれば、低廉な募集コストで地震保険を扱うことができるはずです。しかも、必ず証明書類が提示できるようになれば、料率の適用誤りも起こりようがありません。
尤も、ここで再び偽装問題が出ては何の意味もなくなってしまいますが…。