保険の基本問題に関するWG(12/19)

保険の基本問題に関するWG(12/19)
先週末に、12/19に開催された金融分科会第二部会 保険の基本問題に関するワーキング・グループの議事要旨が公開されました。
「保険の基本問題に関するワーキング・グループ(第49回)議事要旨」
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/dai2/gijiyousi/20081219.html
金融庁 審議会・研究会等 > 金融審議会 > 議事録・資料等 2009.4.9)
このときの話は、資料が公開されたタイミングで1/6のブログで触れました。余談ですが、その時に資料に「保険会社の「契約のしおり・約款」比較評価表」があって、この資料の中で当時は会社名が実名のままで公開されていましたが、今では匿名に置き換えられています。
 
議題は「保険募集・支払い等について」となっていますが、メインは募集に関しての話のようです。その中でも、商品の簡素化…補償内容(保険料と給付の関係)だけではなく募集ツール全般まで含めて保険商品と捉えて考えます…について話し合われたようです。
WGの中ではごっちゃにして論議しているようですが、商品の簡素化は、募集ツールの簡素化(分かりやすさとほぼ同義)と補償そのものの単純化の2点に分けて考えられると思います。
 

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前者(募集ツールの簡素化)に関する意見として、以下のものがありました。

商品の簡素化については、わかりやすさの向上であるとか、募集の資質の向上、帳票の簡素化、説明・契約の確認というようなところは、近年業界としても各保険会社としても力を入れて取り組んでいるところ。
そういった状況も踏まえ、実効性を確保するという観点からどういった方策が必要なのか。あるいは現状のこの業界の取組というのをもう少し見るという考え方もあるのか、というあたりを踏まえてご議論いただければと思う。

現状の、例えば募集に関して、特に意向確認書面だと実質的に2007年9月まで猶予期間があったこともあり、契約概要とか注意喚起情報、意向確認書面を導入をしたことの効果は、遅行して見えてくるものというふうに思っている。

契約概要と注意喚起情報は、実際は重要事項説明書に記載してあるのが一般的です。ただ、これが読む気にさせるシロモノかというと、私にはそうは思えません。日本損害保険協会の「契約概要・注意喚起情報に関するガイドライン(2007年6月)」にはA3版一枚で納めるようにと書いてあるので、それを読む利用者のことをそっちのけで書かなければならないとされている事項を小さな文字でぎゅうぎゅうに納めているというのが実情です。しかも、性質の悪いことに、損保協会は暗にこのガイドラインを遵守するようにアンケート等の形で各社に対して圧力をかけています。
 
最近までの傾向として、契約者・募集人に責めを負わせようとして、様々な確認書類やチェックリストが作られて煩雑になってきました。その揺り戻しの動きがほんの少し出つつあるのですが、現場レベルまでそれが下りるのはもうちょっと先になりそうな気がします。従って、当面は↑で述べられている効果とやら(煩雑さの導入)の影響を受け、その状態が観察されるということになろうかと思われます。
 
議事要旨には特に書かれていませんが、先に書いた「保険会社の「契約のしおり・約款」比較評価表」もこちらのカテゴリに入ります。この比較表は商品の良し悪しを比較しているのではなく、あくまで分かりやすさの点だけにフォーカスをあてて評価しています。得点をつけて数値化すると、何の評価だったのかという観点が薄れて数値だけが独り歩きする傾向(そういう見方しかできない輩も多いです)があるので要注意です。
 

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後者(商品の簡素化)に関する意見として、以下のものがありました。

2つ疑問があり、1点目は、約款の合理化は長年議論されてきたにもかかわらず、いまだにこういう問題が存在するということは、保険会社がさぼっているのか、あるいは原理的に何か難しさがあるのか。
2点目は、規制の強かったときに、多様なニーズに対応できる商品を進め、複雑で広範な商品をつくってきた経緯がある。今自由化になったら、市場原理への疑問が提示されて、これはそのまま放っておいたら複雑化して困ったものだと、こういう議論。簡素化に向かってある種の規制、ルールをつくらなければならないという議論になりかねないが、ここはもう少し長い歴史のスパンで冷静に考えるべきではないかと思う。

約款の合理化が実際になされなかったのは、商品管理部門と損害調査部門がある意味保守的だったからじゃないかと思います。実際に、自分で約款を抜本的に変更しようとしてみると分かると思いますが、その変更によって従来は担保できたものが担保できないように読めてしまう/従来は免責だったものが担保できるように読めてしまうということが起こることを危惧して、うかつに手をつけられないという面があります。それに、これはかなりの知的労力を要する仕事になりますし、コストもかなりかかりますが、それに相当する効果も得られる見込みがないということも着手されない理由の1つと思われます。
もう1つ、リテール分野について言えば、複雑な商品ができたことと規制が強かったことは無関係だと思います。リテール分野の商品を複雑化した背景は2つあります。1つは、複雑化することによって、他社商品との比較を不可能にするためです。もう1つは、いろんな補償を作り、そしてそれを普通保険約款に盛り込むことで、保険料の増収を保険会社が狙ったからです。例えば、自動車保険の人身傷害という補償があります。これは、最初は特約という形式で登場しました。これが実は非常に儲かるので、大手社を中心に普通保険約款に組み込んだ上で不担保にできないようにしてしまいました。これは、消費者のためにそうしたわけではないと思います。
 
この回のWGでは、ちょっと毛色の違う話として、ビジネスモデルの話が出ています。それは、また別のトピックで取り上げようと思います。