保険代理店の保険料に対する裁量

Yahoo!知恵袋の保険のカテゴリに、興味深い質問がありました。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1025345050

保険業法300条(保険契約の締結又は保険募集に関する禁止行為)で、「保険契約者又は被保険者に対して、保険料の割引、割戻しその他特別の利益の提供を約し、又は提供する行為」は禁止されています。について?
前記法律に違犯した場合、当然法律違犯だから罰則規定(刑罰)があるかと思いますが、どのような制裁が有るのでしょうか?
上記法律では、まったく同条件の保険を「A代理店とB代理店は同じ金額で販売しなさい。」ということになります。決められた保険料は動かないとしても、代理店手数料は保険料とは関係ないので、各店の経営努力によりお客様に何%かは還元できると思います。上記法律はこの事までも規制しているのでしょうか?もし規制しているのであれば、独占禁止法カルテル?)に抵触するのではないでしょうか?

保険業界の人にとっては、保険料の割引をしてはいけないというのは常識ですが、冷静に考えると、その常識は世間一般の常識から外れているものだと私は思っています。この質問にいくつか回答がついていますが、「各店の経営努力によりお客様に何%かは還元」の部分についてどれ1つ論理的に説明されているものはありません。
家電や自動車などでも、昔は定価というものがありましたが、それは今ではせいぜいメーカー小売り希望価格であって、強制力を持ちません。小売店の裁量で価格を決め、繁盛する/潰れるといったその結果の責任は小売店がとるといった自然な状態になっています。(ここでいう責任は製品そのものに関するものではありません。)
一方で、保険の場合は、保険会社が強制力のある定価を決め、代理店手数料率も決めてしまいます。しかし、代理店の採算がとれているのかには関与せず、規模の小さい代理店は寧ろ潰れるにまかせているところがあります。
これに対して、まったく疑問を感じないようではダメではないかと思います。
 
ちょっと昔に遡って、1996年以前の保険自由化の前は、損保会社はほぼ横並びでその会社でも同じ商品を同じ保険料で販売していました。実は、この時点で独占禁止法違反のことが業界ぐるみで多々行われていたのですが、そこは今回は突っ込まないでおきます。
とにかく、その後の自由化によって、各社は独立して保険商品の設計や保険料を決めることになりました。これは、たまたま補償内容がまったく同じであっても、保険会社によって保険料が異なることはOKということになります。
これは、付加率の自由化と純率の自由化の2面があります。今回は純率の自由化はあまり関係ないので触れないでおきます。付加率は、保険料中の社費(人件費+物件費)や代理店手数料や利潤です。その付加率も現在は保険会社の裁量に任されています。認可書類である保険料算出方法書にも定性記載…数値そのものを書かずに料率三原則に則る旨を記載…となってきています。
だから、各保険会社は事業費削減に励んで、保険料を下げて自社商品の競争力を高める/保険料を据え置いて利幅を稼ぐといったことを行っています。つまり、保険会社は、販売する商品の価格を自分で決め、認可不要で付加率を適宜変更し、自身の裁量で利幅をコントロールすることができます。当然に、その結果の責任は自身がおうことになります。
 
さて、同じことが代理店にできるのか?というと、現状はそうはなっていません。
これは不公正というものではないでしょうか?保険会社には契約毎に仕入れ値(営業保険料×(1−代理店手数料率)相当額)を払うことを約定してしまえば、実際の保険商品の販売価格は代理店の裁量で決めても構わないと思います。そうすれば、リスクマネジメントや事故時の事務代行を希望する契約者からはその分の料金をもらうとか、利幅を削って安く販売するとかの施策を代理店がとることができます。
現状で行われている販促品の配布やダイレクト損保あるいはその媒介代理店が行う抽選で景品がもらえるキャンペーンは、広義に解釈すれば保険料の割引と同じです。それが認められているのなら、それを拡張すれば上で述べた理屈とそんなに違わないはずです。
 
保険の自由化が行われて約10年になりますが、こういう話や動きがでてきていないのが不思議です。私の気付かない致命的な問題があるのでしょうか?