コンプライアンスと思考停止

前々から感じていたことですが、「三菱UFJ証券の個人情報漏洩事件」「保険代理店の保険料に対する裁量」を書いていて、気になったことがあります。
それは、単にルール・規則を守れというだけのコンプライアンスの徹底は、思考停止を招いているのではないか?ということです。
もう1つ付け加えると、大きな組織・会社に属する人ほど思考停止に陥りやすい状態にあるのではないか?とも思っています。
 
「三菱UFJ証券の個人情報漏洩事件」に関しては、情報漏洩を起こした犯人である同社社員は、社内ルールに則って、データを社外に持ち出しました。つまり、社内ルールに則った点においては、コンプライアンスを遵守していたという見方ができます。
しかし、単にルールを守っていただけであって、何故そのルールが存在するのかということに考えが至っていないのは明白です。これが、思考停止ということです。
 
「保険代理店の保険料に対する裁量」では、そこのブログ内で紹介した質問に対して、Yahoo!知恵袋内では「保険業法でそう決まっているから」という類の上から目線の回答しか付いていません。何故、保険業法が代理店の裁量を認めていないのか?について正しく論理的に回答している人は誰一人いないのです。これも法律がそうなっているから、で思考停止してしまっています。
尤も、私に言わせれば、保険業法のその部分に関しては、必然かつ明確な根拠はなく、代理店の視点での考慮がなされないまま、護送船団時代のままの法律になっているだけのことということになりますが。
 
これは経験から感じることですが、大きな組織・会社では、ルールを策定した際であっても、そのルールの背景や趣旨が末端まで知らされることがなく、ルールの運用の説明と押し付け(徹底)があるだけです。その繰り返しによって、背景や趣旨を知ろうという意欲が失われ、とにかく形だけ上っ面だけ理解して守ろうという土壌が形成されやすいのではないかと思います。
 
ルールそのものを知ること・守ることは当然重要ですが、それに劣らずルールの背景や趣旨を理解しようとすることも大切なことだと思います。
損保会社でも、コンプライアンスは重要だと言われ、その研修が行われますが、大抵はルールの内容を説明するだけの価値のないものではないでしょうか?そして、コンプライアンスに違反すると、官公庁から行政処分を受けるから違反してはいけないと言われるのではないでしょうか?
もしそのとおりなら、このあたりの意識改革が必要です。尤も、その意識改革が一番必要なのは、コンプライアンス部門の人間であることが多々あるのも実態ではないかと思います。