保険の規制・監督の隙間

あまり話題になることはないのですが、保険の規定や約款に関しては、金融庁などの監督と裁判などの司法判断のいずれかに従うことが多いのですが、そのいずれにも依らない部分があります。
金融庁などの監督は、保険業法やその施行規則を主とする保険会社そのものに対する監督が中心です。保険商品については、まず最初に「普通保険約款」「事業方法書」「保険料及び責任準備金算出方法書」を審査し、募集や保険金支払の運用が適格になされるように指導し、不適格な運用をしている場合は行政処分を下します。
個別のケースにおいて、保険会社と契約者の利害が対立して、いずれかが裁判所などに訴えを起こして、その判決が出た場合はそれに従います。
しかし、金融庁の監督の範囲に入らない事で、誰も裁判沙汰にしない場合があります。それが冒頭に書いた部分です。
具体的には、契約規定の中で認可上の根拠に依らない部分や約款解釈(判例のない部分)がそうです。
 
契約規定は地震保険などのごく一部の例外を除けば認可事項ではないので、保険会社が一方的に決めたルールです。勿論、正当な理屈がつくように決めているはずですが、必ずしも公平と言えるかというとそうでもないと私は思っています。
保険会社から見た正当な理屈とそれが公平かどうかは一致するとは限りません。
しかし、正当な理屈が成り立てば保険会社はそれを規定としてルール化してしまいますし、金融庁もそこまで踏み込むことはほとんどありません。
一方で、その適用に関して、裁判などで争わない限り保険会社は問題視もしないし、改定することも考えないと思います。特にこの手のことを営業部門に言っても無意味で、本社の商品管理部門に届くようにしないと変わることはありません。
 
保険職人さんのブログ「保険職人の言いたい放題」の以下の一連の話題はその事を如実に表していると思います。

恐らく、規定そのものの正当性に関しては営業部門では判断つかないでしょうから、そこから上に上がらないうちは真っ当な回答は返ってこないのではないかと思います。せいぜい、規定どおりに運用することについて相手に不満を持たせないようにするのが関の山でしょう。
また、私の感覚では、商品管理部門は多少なりとも正当な理屈が成り立つうちは規定の変更をしないような気がします。裁判沙汰やそれに類似のことになれば別ですが、社内で営業部門からの問い合わせ程度ではトリガーにおそらくならないでしょう。
もし商品管理部門が真面目にやるなら、弁護士に意見を求めた上で規定と照らし合わせることになろうかと思います。
このような問い合わせに関しては、回答そのものだけでなく、保険会社がまともに取り合うかどうかからもその保険会社の体質や姿勢が見えてくると思っています。