保険法改定による自動車保険の約款変更(其の十)

保険法改定による自動車保険の普通保険約款の変更内容を、ソニー損害保険株式会社の総合自動車保険 Type S で見てきました。
今回は、車両価額協定保険特約についてです。普通保険約款 第6章 車両条項を「保険法改定による自動車保険の約款変更(其の九)」(2009.12.27)で書きましたが、実際のところ保険法対応で車両保険の変更の影響を最も受けるのが、この車両価額協定保険特約です。
 

第3条(協定保険価額)

(1)は、改定前特約の第2条(協定保険価額)第1項と同じです。
(2)〜(9)は、改定前特約の第3条(協定保険価額の変更)をベースに変更されている箇所があります。
元々、改定前特約では第1項で保険価額の増減時の扱いを規定していましたが、新特約では(2)で増額時の扱いを、(3)で減額時の扱いを規定しています。増額については保険会社の承認が必要ですが、減額についてはその承認が不要である点が異なります。
(5)と(6)でその保険金額の増減時の追返保険料について規定しています。改定前特約の第3・4項にあたりますが、その内容は一部変更されています。計算に関しては記載内容を明確化しているだけで実質同じですが、追加保険料不払い時の扱いが異なります。つまり、保険価額が増加した場合の追加保険料は不払いであっても、免責にはならずに増額前の保険金額に基づいて保険金が支払われることになります。
(7)〜(9)は車両入替時の協定価額・保険金額に関する規定です。こちらは、改定前特約と同じ内容です。追加保険料不払時は免責となります。
 

第4条(保険金額の調整)

以下の内容の新設規定です。

この特約が適用されている場合には、当会社は、普通保険約款基本条項第11条(保険金額の調整)の規定は適用しません。

そもそも基本条項第11条が保険法に基づく新設規定で、評価済保険の場合は適用しないものであるため、この規定はその打ち消しのために設けられたものだと思います。
 

第5条(損害額の決定)

改定前特約の第4条(損害額の決定)と同じです。
 

第6条(支払保険金の計算)

改定前特約の第5条(支払保険金の計算)と同じです。
 

第7条(協定保険価額が保険価額を著しく超える場合)

新設規定です。

協定保険価額が保険価額(注)を著しく超える場合は、前2条の規定の適用においては、その保険価額(注)を協定保険価額および保険金額とします。
(注)普通保険約款車両条項第1条(用語の定義)に規定する保険価額をいいます。

評価済保険なので、通常は超過保険で契約締結ということは原則としてないはずですが、仮に超過保険となった場合であっても、その超過分について保険金を払うことがないようにする規定のようです。
 

第8条(価額の評価のための告知)

改定前特約の第6条(協定保険価額が適正でない場合)を保険法対応で変更したものです。基本条項の第4条(告知義務)に相当する内容ですが、保険金額に関する事項は危険に関する事項ではないので保険法に定める告知事項ではないため、扱いがやや異なっています。勿論、告知義務違反による解除はできません。
(1)は、価額の評価のための告知についての総則規定です。
(2)は、価額の評価のための告知に関して虚偽の告知等があった場合について定めており、改定前特約の第6条第1項にあたる部分です。しかし、改定前特約では契約解除としていたのが、特約解除に変更されており、契約はそのままとなっている点が大きな違いです。

被保険自動車の協定保険価額を定めるに際し、保険契約者または被保険者が、故意または重大な過失によって当会社が被保険自動車の価額を評価するために必要と認めて照会した事項について、事実を告げずまたは事実と異なることを告げ、その結果として第3条(協定保険価額)の規定により定めるべき額と異なった協定保険価額が定められた場合には、当会社は、保険契約者に対する書面による通知をもって、この特約を解除することができます。

(3)は、(2)の除外規定です。改定前のものとほぼ同じですが、基本条項第4条(告知義務)と同様に保険媒介者の告知妨害が追加されています。
(4)は、価額の評価のための告知に義務違反があり、この特約を解除した場合の扱いについてであり、以下のとおりとなっています。

(2)の解除は、将来に向かってのみその効力を生じます。ただし、その解除が損害の発生した後になされた場合であっても、当会社は、その損害については、第5条(損害額の決定)および第6条(支払保険金の計算)の規定にかかわらず、普通保険約款車両条項第7条(損害額の決定)および第10条(支払保険金の計算)(1)の規定を適用します。この場合において、既に第5条および第6条の規定を適用して保険金を支払っていたときは、当会社は、普通保険約款車両条項第7条および第10条(1)の規定を適用して算出した保険金との差額の返還を請求することができます。

改定前特約では契約解除であり、保険金については免責とすることができるようになっていましたが、保険法では保険価額に関する事項は告知事項としていないので、保険金についても有責となります。従って、この特約だけがないものとして、車両条項に定める基準で保険金が支払われることになります。
(5)と(6)は、車両保険価額の評価のために告知した内容とその事実が異なっていた場合の訂正についてです。この項は今回新設されたもので、その内容は↑の内容に準じたものになっています。
 

第9条(被害物についての当会社の権利)

車両条項に対して、読み替えが必要になるために設けられた車両条項第12条(被害物についての当会社の権利)(1)に対する読み替え規定です。