自動車保険の通販特約と保険料不払解除

大手損保から一足遅れて、ダイレクト系損保も保険法対応について、開始時期と約款がぼちぼちと公開されてきました。今のところ、2月始期からのソニー損害保険株式会社,3月始期からの三井ダイレクト損害保険株式会社,4月始期からのSBI損害保険株式会社アドリック損害保険株式会社自動車保険の約款を各社サイトにて入手できます。
ダイレクト系損保の場合、代理店で対面販売することはほとんどないので、通販特約が付帯されるのが普通です。あるいは、普通保険約款の中に通販特約の内容が織り込まれていることもあります。その通販特約について、今回の保険法対応を機に保険料不払解除について一部変更されており、その内容が微妙に各損保で異なるようなので、それぞれ見てみることにしました。
 
上に挙げた4社の通販特約あるいはそれに相当する箇所は、以下のとおりです。
余談ですが、三井ダイレクトの自動車保険は今回の改定で、「総合自動車保険 ダイレクトIII」から「総合自動車保険」になったようです。

 
一般的に保険料不払解除については、「保険法改定による自動車保険の約款変更(其の弐)」(2009.12.6)に書いたとおり、告知事項の訂正や通知事項によって追加保険料が発生した場合において、期限までに追加保険料の払込がなければ無条件に解除できる規定から、請求をしたにもかかわらず相当の期間内に払込がないことを条件に解除できる規定に変更されています。
なお、普通保険約款においては、契約時保険料の不払解除は規定されていませんが、これは元々普通保険約款自体が代理店扱いをベースに作られており、その場合は契約時に即収するのが一般的だったために想定されないから存在しないのでしょう。(領収前免責と契約解除は別です。)
通販の場合、契約時保険料の不払いと告知事項の訂正と通知事項による追加保険料の不払いについて、それぞれどのような条件で契約解除するのか規定されています。
 
契約時保険料の不払いがあった場合の解除について、4社の規定は以下のとおりです。

ソニー損保:総合自動車保険 Type S

通販特約第4条(保険料の払込み)にて、保険始期までに保険料を払い込まなければならない旨が規定されています。
そして、第6条(保険契約の解除−保険料の払込みがない場合)(1)にて、以下のとおり規定されています。

保険期間の初日後1か月を経過した日までに保険料(注)の払込みがない場合には、当会社は、保険契約者に対する書面による通知をもって、この保険契約を解除することができます。
(注)保険料を分割して払い込む場合は、第1回分割保険料をいいます。

つまり、約款上は、保険料請求することなく保険始期から1か月経過した時点で契約解除できるということです。
ちなみに、改定前は保険始期日までに入金がない場合に解除することとなっており、上記の1か月はありませんでした。ただし、継続契約の場合は別でした。

三井ダイレクト:総合自動車保険

基本条項第4条(保険料不払による保険契約の解除)(1)にて、以下のとおり規定されています。

当会社は、保険期間の初日からその日を含めて14日以内に、前条(1)に規定する保険料が払い込まれなかった場合には、保険契約者に対する書面による通知をもって、この保険契約を解除することができます。

ソニー損保とよく似ていますが、保険始期から1か月ではなく、保険始期から14日と短くなっています。

SBI損保:個人総合自動車保険

通販特約第5条(保険料の払込期限)(1)にて、保険始期の前日までに保険料を払い込まなければならない旨が規定されています。
そして、同条(2)にて、以下のとおり規定されています。

当会社は、保険契約者が(1)の契約時払込保険料の支払を怠った場合(注)は、保険契約者に対する書面による通知をもって、この保険契約を解除することができます。
(注)当会社が、保険契約者に対し契約時払込保険料の請求をしたにもかかわらず相当の期間内にその支払がなかった場合に限ります。

これは、普通保険約款 基本条項にある追加保険料の契約解除と同じルールとなっています。つまり、民法第541条(履行遅滞等による解除権)をそのまま準拠した規定となっています。

アドリック損保:個人総合自動車保険

通販特約第3条(保険料の払込期限)(1)にて、保険始期の前日までに保険料を払い込まなければならない旨が規定されています。
そして、同条(3)にて、以下のとおり規定されています。

(1)の規定により契約時払込保険料が払い込まれなかった場合には、当会社は、保険契約者に対する書面による通知をもって、この保険契約を解除することができます。
(注)相当の期間内にその支払がなかった場合に限ります。

この(注)が何に対する 注 なのか明記されていないのが気になります。また、保険料を請求することについても触れられていません。
約款上は、保険始期の前日以降の適当な日で以って、保険会社が請求なしに解除できるという規定になっています。
 
告知事項の訂正と通知事項による追加保険料の不払いがあった場合の解除について、4社の規定は以下のとおりです。

ソニー損保:総合自動車保険 Type S

第8条(追加保険料の払込み)(1)にて、以下のとおり払込期限が定められています。

普通保険約款基本条項第15条(保険料の返還または請求−告知義務・通知義務等の場合)(1)および(2)の規定により、当会社が追加保険料を請求する場合は、保険契約者は、契約条件の変更日または追加保険料の請求日のいずれか遅い日からその日を含めて14日以内に、当会社の請求する追加保険料を払い込まなければなりません。

そして、第9条(保険契約の解除−追加保険料の払込みがない場合)(1)にて、以下のとおり契約解除について定められています。

当会社は、前条(1)に定める期間内に追加保険料が払い込まれなかった場合(注)には、保険契約者に対する書面による通知をもって、この保険契約を解除することができます。
(注)当会社が、保険契約者に対し追加保険料の請求をしたにもかかわらず相当の期間内にその払い込みがなかった場合に限ります。

これは14日間の期限延長があることを除けば、普通保険約款 基本条項と同じ内容(民法第541条準拠)となっています。

三井ダイレクト:総合自動車保険

基本条項第19条(保険料の返還または請求−告知義務・通知義務等の場合)(3)、以下のとおり規定されています。

(1)または(2)の追加保険料が相当な期間内に払い込まれなかった場合には、当会社は、保険契約者に対する書面による通知をもって、この保険契約を解除することができます。

つまり、約款上は、追加保険料の払込期限から適当な期間内にその保険料の払込がなかったら、請求することなしに保険会社は契約解除できる規定になっています。

SBI損保:個人総合自動車保険

通販特約第6条(追加保険料の払込期限)(1)にて、以下のとおり定められています。

保険契約者は、当会社が次の通知等の受領をする場合に請求する追加保険料の全額を、当会社が追加保険料を請求した日から、その日を含めて30日以内に当会社に払い込まなければなりません。
  (略)

そして、同条(5)にて、以下のとおり定められています。

当会社は、保険契約者が(1)の追加保険料の支払を怠った場合(注)は、保険契約者に対する書面による通知をもって、この保険契約を解除することができます。
(注)当会社が、保険契約者に対し追加保険料の請求をしたにもかかわらず相当の期間内にその支払がなかった場合に限ります。

ソニー損保とよく似ていますが、保険料払込期限が30日と長くなっています。

アドリック損保:個人総合自動車保険

通販特約第5条(追加保険料の払込期限)(1)にて、以下のとおり定められています。

保険契約者は、当会社が第4条(この特約による通知方法)の通知等に基づき承認をする場合に請求する追加保険料の全額を、変更日(注)から、その日を含めて30日(以下「追加保険料の払込期限」といいます。)以内に、当会社に払い込まなければなりません。
(注)当会社が承認した第4条の通知等に基づく保険契約内容変更の効力発生時または追加保険料を請求した日のいずれか遅い日をいいます。以下同様とします。

そして、同条(6)にて、以下のとおり定められています。

(1)の規定により追加保険料が払い込まれなかったときは、当会社は、保険証券記載の保険契約者に対する書面による通知をもって、この保険契約を解除することができます。

つまり、約款上は、30日の払込期限内に追加保険料の払込みがなかった場合は、請求することなく保険会社がその時点で解除することができる規定になっています。三井ダイレクトによく似ていますが、払込期限=契約解除期限となっている点で明確な違いがあります。
 
ここに書いたことは、契約解除についてです。契約時保険料も告知事項の訂正と通知事項による追加保険料も、その領収前については免責(払込期限内に払えば別)となります。従って、この契約解除を意識するのは自動車保険においてはノンフリート等級の継承のためということになろうかと思います。