保険約款の「当会社が別に定めるXXX」

損保業界でしばらく前から約款をわかりやすくしようというテーマがあり、その結果として日本損害保険協会にて以下のガイドラインが作成されました。このガイドラインを元に各損保が自社の平明化規定を作成し、それを約款に適用するという動きがあったと聞いています。
「保険約款のわかりやすさ向上ガイドライン
http://www.sonpo.or.jp/about/guideline/pdf/index/yakkan_guideline.pdf
日本損害保険協会 協会のご案内 > 行動規範・指針等)
このガイドラインの P.5 に、以下の内容があります。

カ.合理的な理由のない保険会社の裁量権留保規定は使用しない
「当会社の定めるところにより」「当会社が承認したとき」など、保険会社が裁量権を留保する規定については、契約の引受上、必要となる合理的な理由がある場合などを除き、使用しない。やむを得ず使用する場合であっても、「当会社の定める」係数・数表や「承認する」条件などが明確に定められている場合には、「ご契約のしおり」やホームページ等で具体的に記載する等、保険契約者(購入検討者)等が情報を適切に取得できる環境を整備することとする。

これに似たものとして「当会社が別に定めるXXX」という記載が約款によく出てきます。いや、最新の約款では減少しているので、よく出ていましたと言うべきかもしれません。
この「当会社が別に定めるXXX」に関して、東京海上日動火災保険株式会社三井住友海上火災保険株式会社株式会社損害保険ジャパン日本興亜損害保険株式会社自動車保険について、最新の約款でざっと対応状況を調べてみました。なかなか興味深い結果でした。
 

東京海上日動のトータルアシスト(総合自動車保険)

2010年1月改定のご契約のしおりにて確認しました。
「当会社が別に定めるXXX」という表現は、「当会社が別に定める「自動車保険車両標準価格表」」(車両価額協定保険特約第2条(3),車両新価保険特約第2条)と「当会社が別に規定する保険期間通算による等級継承特則」(更新契約の取扱いに関する特約)の2つでした。このうち前者に関しては、約款内に注釈で説明があります。後者に関しては特に注釈や説明の類は見当たりませんでした。
 

三井住友海上のGK(家庭用自動車総合保険)

2010年1月改定のご契約のしおり(普通保険約款・特約、サービスご利用規約)にて確認しました。
約款内に「当会社が別に定めるXXX」は存在しますが、それらについて、ご契約のしおりの後ろの方「普通保険約款・特約において「別に定める」こととしているもののお取扱いについて」で個々につき説明がなされています。説明されているのは「用途車種の区分」,「保険期間が1年以外の場合の追返保険料の計算」,「長期一括の追返保険料の計算」,「大口分割の対象自動車」,「大口分割の分割回数」です。
ただ、ここの追返保険料の計算の説明は単純な例示のみで、三井住友海上の保険会社としての計算規定をきちんと説明しているわけではありません。そこは、各社ともほぼ同じ状況で、内規である契約規定と同レベルの内容を公開説明している損保会社はないようです。
 

日本興亜損保のカーBOX(くるまの総合保険)

2009年12月改定のご契約のしおり(安心ガイド)にて確認しました。
「当会社が別に定めるXXX」という表現は、「当会社が別に定める「自動車保険車両標準価格表」」(普通保険約款車両条項 用語の定義,車両新価保険特約 用語の定義,安心更新サポート特約 別表)だけでした。特に説明は見当たりませんでした。
 

損保ジャパンのONE-Step(個人用自動車総合保険)

2009年4月改定のご契約のしおりにて確認しました。なお、この約款は、保険法対応前の約款です。
具体的には、「当会社が別に定める「自動車保険車両標準価格表」」(普通保険約款車両条項第2条(2),車両新価特約第2条,継続契約の取扱いに関する特約第5条),「当会社が別に定める条件」(普通保険約款一般条項第11条(2))の2つがありました。特に、これらについて説明はないようです。
なお、この1つ前の2008年4月改定のご契約のしおりで調査すると、10以上もの「当会社が別に定めるXXX」が見つかります。つまり、2009年4月改定において「当会社が別に定めるXXX」を大幅に減らしていることが分かります。
 
全般的に「当会社が別に定めるXXX」の表現をなくし、その内容を可能な限り約款内に明記する方針をとっているようです。三井住友海上は、それも困難な場合はどこかに説明することとしたようです。
上にも書きましたが、私の感覚では数年前に比べて「当会社が別に定めるXXX」という表現はずいぶんと減っているように思えます。ただ、これは記載を省略したり巧妙に隠したりしたのか/約款内できちんと記載することによってなくしたのかのどちらなのかによって評価が全然違います。
もしも後者の方だとしたら、損保会社が目立たぬところで約款を改善してきたと評価すべきことだと言えます。