統計データ誤りとその影響

半年くらい前の話です。
損害保険料率算出機構が料率算出の基となるデータに誤りがあったことを公表しました。
ちなみに、私の知る限りでは、実は軽微なデータ誤りは割としょっちゅう起こっており、それは大抵担当者レベルでやりとりした後に訂正するだけで済まされていたはずです。
今回は、そういう軽微な誤りではなく、統計自体に影響を及ぼす重大な誤りがあったために、そのことが公開されているということのはずです。
「参考純率関連の統計データ誤りへの対応について」
http://www.nliro.or.jp/disclosure/sashikae/20111222.pdf

  
このことについて、いくつか不審な事と疑問点があります。
 
まず第一に、「算出時点で適正なデータ報告がなされていた場合と比べて、現行の自動車保険および傷害保険の参考純率が、本件報告データ誤りの結果、高く算出されていたという状況にはありません。」とありますが、じゃぁ、保険契約者が一切不利益を被っていないかというとそうとは言えないだろうということです。
自動車保険平成24年の型式別料率クラスの変更は行われなかったと聞いています。
その原因は、どう考えても今回のこの誤りによるものでしょう。
毎年行われる型式別料率クラスの変更では、型式によってクラスが上がったり下がったりします。
もしも今回のデータ誤りがなければ、クラスが下がる型式の車に乗っている人は、更改時の保険料がデータ誤りによって本来の保険料よりも高くなります。
勿論、その反対の人も起こりますが、保険会社から見てトントンなので問題はないと考えているなら、その見方はまったくの誤りです。
 
また、算出機構は2011年にノンフリート係数において事故有時に別の係数を使うようにする参考純率の変更の届出をしました。
この制度自体にも言いたいことはたくさんあるのですが今はそれは置いておくとして、データに重大な誤りがあったのなら、その届出を取り下げるのが筋ではないかと思います。
穿った見方をすれば、参考純率改定の届出を金融庁が受理するまで、データ誤りがあったという認識を故意に遅らせて、参考純率改定を通すことを優先させたのではないかということです。
そこには、自動車保険の収支の悪化にあえぐ損保会社からの圧力があったのかもしれません。
 
このデータ誤りは、当然ながらどこかの損保会社が誤りを犯したはずですが、そのことについて隠されたままになっています。
当事者の損保会社が名乗り出たということもまったくありません。
統計に影響を及ぼすような差異を生じさせるということは、シェアの大きい大手社だろうと推測されます。
算出機構が庇っているのか、当事者が圧力をかけて黙らせているのかどちらかでしょう。
いずれにせよ、業界全体で隠蔽をしている印象を強く受けます。
 
また、このデータ誤りがあったことについて、ほとんどニュースになっておらず、一般の新聞等だけでなく業界紙でも触れられていないというのも妙です。
今では算出機構もニュースリリースのページからは見えないところに文書を載せているので、知っている人でなければもはや気付かないでしょう。
 
この一連の事を通じて、非常に残念なことに算出機構とその取り巻き連中は原子力ムラと同じ古い体質を持ったままと私は感じました。