傷害保険参考純率改定(2012年5月25日届出)

損害保険料率算出機構にて算出している傷害保険の参考純率について、2012年5月25日に金融庁に改定の届出を行い、その内容に関して昨日(6月13日)適合性審査結果通知がありました。
公表されている内容は以下リンクのとおりで、今回の改定では大きな制度変更はないようです。(小さいのは…)
「傷害保険参考純率改定のご案内」
http://www.nliro.or.jp/service/ryoritsu/ssiryo201205.pdf
(損害保険料率算出機構 業務内容 > 料率算出業務 > 参考純率に関するお知らせ > 参考純率改定の内容)
 
前回に引き続き、基本的に保険料上げです。念のため、平均改定率を載せておきます。

 
料率が上がった理由について、算出機構は死亡・後遺障害保険金と通院保険金の支払いが増加したためであるとし、その原因に関しては以下のとおり書かれています。

平成17年度以降、保険会社各社において、事故発生時にお支払いできる可能性のある保険金を全てご案内のうえ、お支払いするといった支払態勢の構築および確立の取組みが浸透した結果、契約者等においても保険金のお支払いに対する認識が高まり、保険金の請求が行われるようになってきています。その結果、平成19年度までの保険実績統計に基づき、平成21年5月に参考純率の改定を行いましたが、平成20年度以降も後遺障害被害者数の増加や平均通院日数の長期化が続いたことにより、支払保険金が増加しています。

平たく言えば、「支払漏れの減少」「後遺障害の件数増加」「通院の長期化」の3点が原因ということになります。この3点は前回(2009.5.19届出)のときとほぼ同じです。
これを読んで2つ気になることがでてきました。
 
まずは「後遺障害の件数増加」です。前回はこの点に関して、高齢者によるものと書いてありました。今回は高齢者には言及していませんが、おそらく同じでしょう。個人的には、自動車保険で高齢者の損害率悪化を理由に料率を変えたら、マスコミがずいぶんそれで煽ったので今回は記載しなかったのでは?と思っています。
従前から高齢者のケガは長期化しやすいこともあり、一定年齢以上は引受制限をするところもありました。ただし、リスク細分をして、年齢別の料率とするのは一般的ではないと認識しています。
しかし、料率上げの傾向が続くようなら、年齢別料率を導入して高齢者以外の保険料を低くすることを考える損保が出てくるのではないでしょうか。特に保険料上げによるマイナス影響が大きく、20〜50歳をターゲットにしたい損保はそうだろうなと思います。
ひょっとしたら、次回の改定では参考純率そのものが年齢別料率になる可能性もゼロではないと思ってます。
 
それと「支払漏れの減少」です。
これは、今では保険金請求漏れと表現した方が正確かと思っていますが、傷害保険ではまだまだ潜在的にあると考えています。
勿論、自分が契約者になって主体的に契約したものについては、請求漏れが起こる可能性はかなり低いでしょう。しかし、おまけタイプのもの…例えばカード付帯の傷害保険でカード所有者の保険料負担がないものやごく少額のものはどうでしょう。実際に保険事故があったときに、あぁこの保険が使えると思い出すでしょうか?契約者が思い出さなければ、この手のものは保険会社側からは把握できないでしょうから、保険金請求漏れは容易に発生します。
こういうのが顕在化したら、まだまだ支払保険金は伸びます。無論、潜在的なままなら、そうはならないでしょうけど。
 
それから、「統計データ誤りとその影響」(2012.5.27)の件と、今回の傷害保険参考純率改定および自動車保険参考純率(等級制度)改定(2011年9月届出)の関連も気になります。
算出機構は、この件を世間に対してきちんと説明しないまま、うやむやにしてしまうのだろうなと思っています。どうやら旧態依然の悪い体質を未だに引きずっている組織のようですから。
保険会社に対して非常に大きな影響を持つ組織なので、本当はそんなことではダメなはずなのですが。