保険商品の提供在り方WG第2回資料より(1)

民主党政権になってから中間論点整理を出したまま中途半端な状態で2009年から休止状態になっていた金融審議会の「保険の基本問題に関するワーキング・グループ」が、一部の課題を対象に「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ」(以下、保険商品の提供在り方WGと書きます)として漸く再開したようです。
保険商品の提供在り方WGは、第1回が2012年6月7日に、第2回が2012年6月27日に開催されており、その議事録は現時点では公開されていないものの、配布資料のファイルだけが公開されています。今日はその第2回の配布資料を見て、興味を引いた点について書こうと思います。
 
まずは、金融庁が作成した事務局説明資料からです。ここには【保険募集の定義について】【代理店に係る規制について】【契約概要等について】の3点が取り上げられています。議事録がないので、どういう問題意識をもたれているのかは推測にすぎないのですが、このうち前の2点について思うところを書いてみます。
 

【保険募集の定義について】
(略)
○募集形態の多様化
−募集人ではない事業者が、手数料を得て、店頭に保険商品の募集文書を備え置く行為
−比較サイトが、閲覧者を保険募集に誘導する行為

「募集人ではない事業者が、手数料を得て、店頭に保険商品の募集文書を備え置く行為」については、コンビニエンスストアや大衆レストラン等でレジ付近にチラシや申込書一式を置いていることを指していると思います。明らかに募集文書ですが、置いているだけで勧誘行為は全くされないはずです。おそらく店員に保険に訊ねても、内容は保険会社か代理店に訊ねるよう返答するよう教育されていることでしょう。つまり、保険に関して申込みの受付どころか勧誘も説明もしないことによって保険募集には当たらないという整理をしていると考えられます。また、手数料を得て と書いていますが、これも報酬体系は様々ではないかと思います。他の業務提携の一環として不可分な形で、行われているケースもありうるでしょう。要は、明確な手数料を得ずに行われているケースもあるのではないかということです。私は、これに関しては、その店頭に据え置かれている保険商品如何によっては問題ないと思っています。複雑な保険商品ならともかく、保険募集人がいたとしても通り一遍の説明しかされないような単純な保険商品なら、このような行為があっても顧客保護に反する事はないと考えられるからです。
「比較サイトが、閲覧者を保険募集に誘導する行為」については、比較サイトが代理店委託を受けている場合と保険会社が広告と位置付けて行っている場合に分けられます。前者については募集人が募集行為を行っているにすぎないので、問題にはならないでしょう。後者に関しては、保険会社が募集行為を行っているのであって、その広告の一環として比較サイトを利用しているという整理がされているのではないかと思います。比較サイトの場合はまだ一定の規模とシステム連携が必要なため保険会社の監督が行き届くと考えられるためいいのですが、細かいアフィリエイトあたりになると微妙なものがあるかもしれないと思っています。また、逆に代理店が行う可能性があるステルスマーケティングも類似の問題をはらんでいると思っています。
 

【代理店に係る規制について】
(略)
乗合代理店に係る論点
−推奨する商品の選定の適切性
−乗り合う保険会社間の情報の共有(不祥事件、個人情報等)及び責任の範囲
−保険仲立人制度との関係
○その他
−保険募集に係る業務の一部のアウトソース(テレマーケティング、募集管理業務等)
−代理店主による保険料の着服事例の発生

「推奨する商品の選定の適切性」に関しては、同種の保険商品を複数取り扱っている場合に、顧客にとって真にベストな保険商品を推奨しているのか、代理店にとって都合の良い保険商品を推奨しているのかという問題を常にはらんでいると思います。一応、形式上は「保険会社向けの総合的な監督指針」にて意向確認をすることが求められておりますが、その検証はされていないというのが実態かと思います。なぜなら、その検証は当然に代理店自身も引受保険会社も行うことができません。いや、仮に行ってもその検証結果は信用できないというべきかもしれません。そして、顧客からも検証不能です。保険商品の知識のある第三者にしかできないことでしょうが、その方法やコストを考えると厳しいものがあると思います。ベストアドバイス義務があり、保険会社の代理ではなく顧客側の立場に立てる保険仲立人が乗合代理店にとって代わるのも解決策の1つとなりうるかもしれません。この問題に切り込むのでしょうか?そうだとしたら、非常に興味があります。
「乗り合う保険会社間の情報の共有(不祥事件、個人情報等)及び責任の範囲」に関しては、他の引受保険会社の顧客情報をどこまで共有することが許容されるのかという問題があるかと思います。たまたま情報漏洩があって、そういうことが行われていることが発覚したことがありました。その事例は「損保ジャパンの6月8日の顧客情報紛失」(2008.6.15)です。ここでの株式会社損害保険ジャパンの対応を見ると、扱ってはいけないはずの情報を扱っていることに対する認識がまるで欠如しているように感じます。早い話が、情報漏洩を起こさなければ合法とは言えない情報も取り扱っても問題ないだろう!と読めます。それが、損保ジャパン固有の問題なのか、業界全体の認識なのかはここからは分かりませんが、いずれにせよメスを入れるべき問題かと思います。
「保険募集に係る業務の一部のアウトソース(テレマーケティング、募集管理業務等)」は、業務の分担と報酬に係る課題があるかと思います。そこには2種類のケースがあると思っています。アウトソース先が引受保険会社である場合とそれ以外の業者である場合です。前者の場合にはアウトソースに係る費用を代理店から保険会社に支払っている限りにおいては、問題はないものと考えられます。しかし、そうではなく業者にアウトソースしている場合、その業者が他の代理店であるか否かを問わず、現行制度では募集行為を代理店が他人に委託することは認められていないため、問題となります。勿論、募集行為ではないことを委託することは可能なので、募集行為ではないと位置付けて行っているのでしょうが、勧誘や異動受付まで委託しているとなるとクロじゃないかと思います。ここは、顧客保護を勘案した上で募集行為とは何かの整理をし、規制の見直しをする時期がきているのではないでしょうか。
 
長くなったので、他の配布資料については(2)以降で取り上げます。