保険商品の提供在り方WG第2回資料より(3)

保険商品の提供在り方WG第2回資料より(1)」(2012.6.30)と「保険商品の提供在り方WG第2回資料より(2)」(2012.6.30)の続きです。
今回は、同志社大学法科大学院の木下参考人説明資料を見てみました。
 
これもまた議事録がないので感触での話になりますが、木下参考人の資料は事務局説明資料と共通する点が多く見られ、もしかしたら木下参考人の問題提起を元に事務局説明資料が作られているのではないかという感じがしました。

この表にまとめられている課題は実際そのとおりですが、すべてを規制対象にしようというのであれば無理があります。特に、右上の枠がそうです。
「非募集人による情報発信は、現状では規制外」とありますが、これを規制するなら、保険についての情報発信(クチコミや感想も含まれます)をする人は募集行為をしなくても規制対象になってしまいます。それはナンセンスですし、実施したら言論統制です。まさか、情報による対価を得ているかどうかで線引きをするというのでしょうか。
ふと思ったのですが、雑誌や新聞でも保険特集のようなものが組まれ、自称専門家が持論を展開してアレがいいコレがだめ等とやることがありますが、それはこの課題に含まれていないような気がします。保険会社からの直接の報酬は得ていないかもしれないものの、明らかに比較情報を提供していると言えるものもあります。その解説自体に誤りがあることがあり、誤った情報を広く発信していると考えられるケースもあります。
いずれにせよ、議論の行方を注視する必要があります。
 
保険者からの情報提供に係る内容として、「契約概要」「注意喚起情報」−所謂、重要事項説明書についても掘り下げた提言がされていました。

現行制度の下では、「契約概要」「注意喚起情報」の記述は、読ませて理解させるには量が多く、苦情対応を考えれば情報量が少なすぎる、等の指摘がある。
制度趣旨に遡ってこうした指摘を検討し、英国などで行われている「募集文書の読みやすさテスト」、認知心理学など消費者の理解に関する専門的知見を活用し、改善のための検討を行い、規律を整理すべきである。

この分量に関する提起は尤もなことです。一般社団法人 日本損害保険協会の「契約概要・注意喚起情報に関するガイドライン(2012年4月)」にもその点を配慮して「記載にあたっては、より重要な情報を慎重に選択し記載することで、「契約概要」「注意喚起情報」それぞれ、A3版1枚程度の分量を目安とする。」と書かれています。しかし、これはこのガイドラインの中で実際は一番軽く扱われている事項ではないかと私は思っています。発生するケースが限定される苦情のために重要事項説明書の分量を増やしているのであれば、それは分量の増加により一般的な顧客に分かりにくさを増すことを強いていると言えます。

1.重要事項説明義務を「契約概要」「注意喚起情報」の作成・交付義務と、説明義務に区分する。説明義務は、対面/非対面の別に応じて、募集人・仲立人として尽くすべき注意義務の水準及び説明の方法、程度を中心とした規律とする。
a)対面販売(電話販売を含む)の場合には、当該顧客が商品選択をなし得る程度の理解に達していないか、商品につき誤解していることが予見可能な場合に、顧客により適切な選択がなされるために必要な説明をなすべきものとする。
b)電話販売を除く非対面販売の場合には、顧客の苦情処理などの経験から顧客が陥りやすい事項について、当該商品の典型的顧客が容易にアクセスし得る適宜の方法で、追加的情報を提供していることを指摘し、その参照を促すほか、助力が必要な場合には口頭説明を受けられる方法を指摘することによる。
2.「契約概要」「注意喚起情報」の交付義務については、当該商品の典型的顧客の理解度に照らして、文書の目的ごとに、情報量の適正性と内容の理解可能性を確保できるような記載項目を明らかにすべきである。
a)契約概要については、商品選択/商品の基本的な仕組みの理解をさせる文書としての観点から、注意喚起情報に回せる事項がないか検証し、商品選択上の特記事項以外は、記述内容が標準化される方向で内容を整理すべきである。
b)注意喚起情報については、一般的、定型的な注意事項に加えて、当該商品に固有の注意事項を列挙できるような記載内容とし、情報不足に起因する苦情、紛争の防止に資する資料として活用される方向で内容を整理すべきである。

重要事項説明に関しての在り方の提言として、今までになかった切り口でなされています。それは、対面/非対面で変えるべきという考えです。募集自体の特性が実際違うのだから、これは非常に当を得た考え方であると思います。
ただ、この議論をするメンバーにはデジタルネイティブと言える年代がいないように見受けられ、実際に非対面の消費者の行動様式をどこまで正しく掴んだ上での議論ができるのか非常に不安です。また、オブザーバーで入っている損保・生保の人間を見ても、非対面募集をつぶしたいと思っている側の人間であることが一層不安を感じさせます。
厚生労働省の薬のネット販売のような不合理な規制をすることにならなければいいのですが…