保険法改定による自動車保険の約款変更(其の四)

保険法改定による自動車保険の普通保険約款の変更内容を、ソニー損害保険株式会社の総合自動車保険 Type S で見てきました。
今回は、普通保険約款 第1章 賠償責任条項についてです。変更内容は多くないので、特に気になった点だけを取り上げることにします。
なお、普通保険約款 第7章 基本条項は「保険法改定による自動車保険の約款変更(其の壱)」(2009.12.1),「保険法改定による自動車保険の約款変更(其の弐)」(2009.12.6),「保険法改定による自動車保険の約款変更(其の参)」(2009.12.26)で書いています。
 

第7条(同僚災害に関する特則)

これは、ソニー損保固有の変更箇所です。標準約款では、同僚災害担保は特約となったままですから。
ソニー損保も今回の改定前までは、同僚災害担保については「記名被保険者による同僚災害担保特約」の付帯によっていました。それが今回の改定で、普通保険約款の中にこの特約が織り込まれました。
 

第19条(先取特権−対人・対物賠償共通)

保険法第22条(責任保険契約についての先取特権)が新設されたことにより、約款に新設された規定です。

(1)対人事故または対物事故にかかわる損害賠償請求権者は、被保険者の当会社に対する保険金請求権(注)について先取特権を有します。
(注)第15条(費用−対人・対物賠償共通)の費用に対する保険金請求権を除きます。
(2)当会社は、次のいずれかに該当する場合に、保険金の支払を行うものとします。
① 被保険者が損害賠償請求権者に対してその損害の賠償をした後に、当会社から被保険者に支払う場合(注1)
② 被保険者が損害賠償請求権者に対してその損害の賠償をする前に、被保険者の指図により、当会社から直接、損害賠償請求権者に支払う場合
③ 被保険者が損害賠償請求権者に対してその損害の賠償をする前に、損害賠償請求権者が(1)の先取特権を行使したことにより、当会社から直接、損害賠償請求権者に支払う場合
④ 被保険者が損害賠償請求権者に対してその損害の賠償をする前に、当会社が被保険者に保険金を支払うことを損害賠償請求権者が承諾したことにより、当会社から被保険者に支払う場合(注2)
(注1)被保険者が賠償した金額を限度とします。
(注2)損害賠償請求権者が承諾した金額を限度とします。
(3)保険金請求権(注)は、損害賠償請求権者以外の第三者に譲渡することはできません。また、保険金請求権(注)を質権の目的とし、または(2)③の場合を除いて差し押さえることはできません。ただし、(2)①または④の規定により被保険者が当会社に対して保険金の支払を請求することができる場合を除きます。
(注)第15条(費用−対人・対物賠償共通)の費用に対する保険金請求権を除きます。

 

第20条(損害賠償請求権者の権利と被保険者の権利の調整)

これも新設規定です。保険金額が保険会社が支払うべき総額未満の場合は、被保険者よりも被害者への支払を優先するということです。

保険証券記載の保険金額が、前条(2)②または③の規定により損害賠償請求権者に対して支払われる保険金と被保険者が第15条(費用−対人・対物賠償共通)の規定により当会社に対して請求することができる保険金の合計額に不足する場合は、当会社は、被保険者に対する保険金の支払に先立って損害賠償請求権者に対する保険金の支払を行うものとします。

 

附則

第19条と第20条はその根拠が保険法に基づくものであるため、保険法施行日(2010.4.1)までは第19条と第20条を適用しないことを示したものです。この付則は、4月1日より早く保険法対応をする約款のみに全社共通で入っているはずです。

(1)第19条(先取特権−対人・対物賠償共通)(1)および(2)の規定ならびに第20条(損害賠償請求権者の権利と被保険者の権利の調整)の規定は、保険法(平成20年法律第56号)の施行日以後に事故が発生した場合に適用します。
(2)第19条(先取特権−対人・対物賠償共通)(3)の規定は、保険法の施行日以後に保険金請求権(注)の譲渡または保険金請求権(注)を目的とする質権の設定もしくは差押えがされた場合に適用します。
(注)保険法の施行日前に発生した事故に係るものを除きます。