医療保険の広告規制見直しの監督指針(案)

医療保険の広告規制見直し」(2012.5.28)で、いずれ金融庁所管の「保険会社向けの総合的な監督指針」の「II-3-11 適切な表示の確保」の項に記載がされるのではないかと書いていた内容について、思ったとおり監督指針の改正案が出てきました。
「「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部改正(案)の公表について」
http://www.fsa.go.jp/news/23/hoken/20120628-1.html
金融庁 報道発表資料 2012.6.28)

1.保険商品の保障内容の優良性を示す際の留意点の追加
先進医療に係る治療費等を保障する保険商品の保障内容の優良性を示す場合に、給付対象となる医療行為や医療機関の範囲等に制限がある旨を表示しないことにより、契約者等に保障内容が著しく優良との誤解を与えることを防止する観点から、給付対象とならないことがあることを表示することで、保険契約者等の保護を図るための対応を行う。
2.客観的事実について表示する際の留意点の追加
医療費の自己負担額の客観的事実について表示する場合に、高額療養費制度に基づく給付を反映していない額を表示することにより、契約者等が過大に認識することを防止する観点から、誤った事実認識をさせるおそれのない表示をすることで、保険契約者等の保護を図るための対応を行う。
また、テレビCM等において重要な事項を表示する場合に、十分な視認性を確保したうえで画面上に表示することで、保険契約者等保護を図るための対応を行う。

物凄く要約すると「先進医療は限定しての適用しかないのだから、どんな治療でも先進医療が適用されると誤解されるような表記をしてはいけない」,「高額療養費制度を無視して、治療費のニーズ喚起(高額になる)をしてはいけない」の2点が医療保険に関する今回の変更です。
ここまでは予想どおりです。実際、全ての保険会社はこの年末年始で対応済みでしょうから、今後作成する募集文書についてのみ気をつけていればいい話です。
 
そして、医療保険に限らないものとして、「重要な注記を目立たないようにしてはいけない」が追加されています。
これはちょっと唐突感があります。経緯とどの程度なら十分な視認性と言えるのかを知りたいところです。多分、後者の方は誰かが質問するのではないかと思っていますけど。
 

AIUの対サイバー攻撃の補償と保障

AIU保険会社ニュースリリースサイバー攻撃を受けた後に提供するサービスに関するものがありました。
実は、最初にこれを読んだ時は何のことかさっぱり分からず???という状態でした。というのも、リリースされたのは保険事故が起こってから提供するサービスの内容だけで、無条件にこのサービスが使えるわけではないことが明らかであるにも関わらず、その条件が書かれていなかったからです。
サイバー攻撃を受けた際の初期対応を支援するため、株式会社サイバーディフェンス研究所と業務提携契約を締結」
http://www.aiu.co.jp/about_us/press/2012/12_06_22.htm
AIU保険会社 プレスリリース 2012.6.22)

今回の提携は、サイバー攻撃に対しては専門的な知識と技術を持ったセキュリティの専門家による迅速な初期対応が重要であることから、お客さまが被害に遭われた際には、セキュリティ事故への対応に実績のあるCDIをご紹介し迅速に初期対応を行うことで「ダメージコントロール」を支援し、被害の最小化と速やかな復旧、賠償リスクの軽減を図ることを目的としております。これにより初期対応に要した費用を補償する保険としての機能に加えて、セキュリティ専門機関による初期対応の実効性が確保されることとなります。

 
しかし、その疑問については、先月のニュースリリースを見て氷解しました。この「サイバー攻撃対応費用特約」の現物給付として、今回リリースした内容をやるということのようです。(付帯サービスなのか現物給付なのか微妙です。)
サイバー攻撃を受けた際の初期対応費用を補償するサイバー攻撃対応費用特約を販売」
http://www.aiu.co.jp/about_us/press/2012/12_05_17.htm
AIU保険会社 プレスリリース 2012.5.17)

[本特約の特長]
従来の個人情報漏洩保険では、個人情報が漏洩した場合に要した危機管理実行費用や法律上の損害賠償責任が補償の対象でしたが、この特約をセットすることで、情報漏洩が発覚する前のサイバー攻撃を受けた段階から補償を開始し、セキュリティ専門機関による迅速な初期対応をサポートすることにより、情報漏洩、信用失墜、システム停止などの被害を抑え、賠償リスクの軽減を図ります。

 
この2つのニュースリリースを併せて読むとなかなか興味深い内容と言えます。
一般に個人情報漏洩があった場合、その被害の実額−対象者へのお詫びや再発防止のためのシステム改修などを確定させた上で、保険金を支払うのが普通ではないかと思います。
しかし、この保険は、その前の段階−個人情報漏洩の可能性が生じた時点で、個人情報漏洩を起こさせないために発生する費用を補償するものとしています。そして、それは単に金銭的な問題だけでなく、実際の作業は専門家が行わなければ効果がないことから、株式会社サイバーディフェンス研究所と提携して補償することとしています。
「情報漏洩が発生してからかかるコスト(風評による逸失利益を含む)×その発生率」と「情報漏洩を防ぐコスト」のバランスを考えて検討することではあり、「情報漏洩を防ぐコスト」は一般には被保険者が負担するものでしたが、サイバー攻撃を保険事故として限定し、その場合のみにかかる費用を損害額とした保険を作ったということです。そして、それは、「情報漏洩が発生してからかかるコスト(風評による逸失利益を含む)×その発生率」を下げる効果も期待できます。
ただし、サイバー攻撃に限定している点で、すべての個人情報漏洩のリスクに対処できるわけではないことに留意する必要があります。たから、この保険は単品ではなく、特約なのでしょう。
それらも含めて、非常によくできていると思います。
それにしても、2012.6.22のニュースリリースだけではこの意図が分からなかったのは、私がバカだからでしょうか。少なくとも人並みだとは思っていたのですが。
 
余談ですが、AIUは日本社に移行することになりました。チャーティスとしてAIU富士火災海上保険株式会社が別会社として存続する意味合いが薄れてくれば、この両社はいずれ合併するような気がします。
 

標準利率の下げ予測と保険料

読売新聞の記事に生保各社が保険料を上げるだろうというものがありました。
「生命保険料、来春上げ…標準利率0.5%下げで」
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20120623-OYT1T01253.htm
(読売新聞 2012.6.24)

契約者に約束する運用利回り(予定利率)の目安となる「標準利率」について、金融庁が現行の年1・5%から年1・0%に12年ぶりに引き下げる見通しになり、保険料を増やさなければ保険金の原資を確保できなくなるためだ。

ちなみに、記事中では「終身保険養老保険など」を対象にと書かれていますが、責任準備金における標準利率の適用は生保会社で販売している商品全てに影響がある話かと思います。ただ、予定利率が標準利率と乖離したときに影響が大きくなるのは、超長期の保険と生存保険でしょうから、そこだけ予定利率を変更することはあるかもしれません。すると、定額タイプの年金保険や終身医療保険も変更の対象になるかもしれません。
 
話のついでに標準利率に関する告示のリンクを張っておくことにします。
「責任準備金の積立方式及び計算基礎率を定める件 平成8年2月29日大蔵省告示第48号」
http://www.fsa.go.jp/common/law/kokuji/19960229zai48.pdf
金融庁
 
生保の方はおいとくとして、損保の方は?と考えると、第三分野商品や積立保険は予定利率を上げる動きが出てくるかもしれないと思っています。
積立型基本特約付帯の積立保険を例として、いくつかの想定をおいて試算してみました。
仮に、予定利率が 1.5%から 1.0%になるとし、保険期間:10年・満期返れい金:10万円・予定契約消滅率:0・予定払込免除発生率:0 という前提とします。
この場合の年払平準積立保険料は、9,205.3377円から 9,463.5719円に上がります。つまり、約2.8%の上げになります。積立型基本特約の保険料はこれに×(1+代理店手数料率+維持費率)としたものなので、上昇率は同じです。ただし、月払・半年払の場合は分割割増が予定利率と連動するので異なります。
この試算は積立部分だけで行っており、補償部分の保険料上げはないとすれば、補償部分の割合が高いほど保険料の上がり幅は約2.8%よりも小さくなります。予定利率が2/3(=1.0%/1.5%)になるのに比べれば、約2.8%以下の影響とは思ったよりも大したことがないように思えます。
ちなみに、これが年払ではなく一時払になると、全然違う様相を呈します。上記と同じ条件での一時払積立保険料は、86,166.7232円から 90,528.6955円に上がり、約5.1%の上げになります。
勿論、先ほどと同じ理屈で補償部分の割合が高いほど保険料の上がり幅は小さくなります。でも、一時払で売る積立保険は補償割合が低い傾向にあるでしょうから、この上昇率のインパクトは小さくないと思います。
 
あとは、この標準利率が改定されたとしたら、そのときに予定利率の変更を同じようにするか?ということがポイントになってこようかと思います。
ここは、営業面と財務面のバランスを見て判断されるのではないかと思いますが、昨今の状況では後者の方を優先して判断されることになるような気がします。
 

自動車保険-業界横並びへ(後遺障害等級表)

業界横並びと各社マターの境目(自動車保険の後遺障害等級表)」(2009.7.20)で2009年7月1日時点の約款で書いた時は、後遺障害等級表が損保によって異なっている部分がありました。
この時は、標準約款の後遺障害等級表が自賠法施行令の最新版と一致していなかったのが原因です。それで、標準約款と同じにしている損保と当時の自賠法施行令の最新版と同じにしている損保があり、それが約款の違いとなっていました。
 
今では、損害保険料率算出機構も標準約款の後遺障害等級表もその当時から変わっています。
 
それで、例によってそれをネタに他のシリーズものと同じように書こうかと思ったのですが、外貌の醜状で後遺障害等級に男女差があることについて違憲判決が出て、それで外貌の醜状で男女差のある様々な後遺障害等級表が改定されました。
勿論、その対象には自賠責の後遺障害等級表も該当しますし、各損保商品の約款内の後遺障害等級表も変更の必要が生じました。これは全社が対応したようです。
 
という訳で、調べるまでもなく、自動車保険の後遺傷害等級表は全社が同じになっている…はずです。
 

よくある疑問−保険証券のペーパーレス

たまたま Yahoo!知恵袋を見ていたら、こんなのがありました。要は保険証券はなくても大丈夫なのか?という内容です。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1388252348

5年ほど前からいわゆるネットの自動車保険にしていますが、気になるのが、保険の証券をペーパーレス化すると料金が安くなることです。
確かに安くなることはうれしいのですが、
・実際に事故などに遭ったときに、手元に証券がないことに対する不安。
・保険会社のシステムがダウンしたときなどにしっかりと対応してもらえるのか?
などがあります。
時代の流れというのもあるでしょうが、本当にこれって大丈夫なのかと不安になります。

 
結論から言ってしまえば、少なくとも通常の自動車保険において保険証券はなくても全然問題がないです。(質権設定があったり、積立保険だったりすれば別ですが)
契約時に送付された保険証券を紛失した場合であっても、証券番号さえ何らかの手段で伝われば保険事故があった場合の保険金の支払にも全く支障を来たさないはずです。
保険証券が保険契約者の手元にある最大の利点は、契約内容がすぐに分かるという点です。これはケータイのMYページで見れるなら、それと何ら変わりはありません。
 
ちなみに、保険会社のシステムがダウンしたら、保険証券が手元にあっても多分ダメなので同じです。でも、この部分は最も重要なシステムなので、滅多なことではダウンしないようになっているはずです。
 
余談ですが、保険法で以下のように保険証券の交付について規定されていますが、これは任意規定なので特約で保険証券を発行しない合意がされていれば交付をしなくてもよいということになります。

(損害保険契約の締結時の書面交付)
第六条 保険者は、損害保険契約を締結したときは、遅滞なく、保険契約者に対し、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
(以下、省略)

(傷害疾病定額保険契約の締結時の書面交付)
第六十九条 保険者は、傷害疾病定額保険契約を締結したときは、遅滞なく、保険契約者に対し、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
(以下、省略)

平成24年台風4号による業務への影響

今年になって初の台風直撃です。それで東京海上日動火災保険株式会社の契約保全部門であるカスタマーセンターは店仕舞をする案内が出ていました。
事故受け窓口ではないし、従事している従業員の構成を想像すると、まぁ分からなくもありません。きっと、退社命令でも出したのでしょう。
「カスタマーセンターでのサービス一部停止のお知らせ」
http://www.tokiomarine-nichido.co.jp/news/120619.html
東京海上日動火災保険株式会社 東京海上日動からのお知らせ 2012.6.19)

台風4号接近に伴う風雨の影響により、弊社カスタマーセンター自動車保険のご照会ならびにご契約変更手続き等の受付を、6月19日(火)は午後6時をもちまして終了させていただきます。

でも、普通は午前9時〜午後8時で、本日は午後6時までってあまり大きな違いはないような気がするのですが…
 
それにしても東京海上日動ほどの大手がカスタマーセンターを1箇所にしか持っておらず、その1箇所の運営で支障が出たときに、その業務を継続する仕組みにしていないことが意外でした。
今回の件は小さな話ですが、例えば大地震とかでそのカスタマーセンターで業務ができない状態になったら、カスタマーセンターでやるはずだった業務はできなくなるということでしょうか?
もしもそうだとしたら、これは結構大きな問題だと思います。
 

エース損保 旅行保険の航空券とのセット販売

エース損害保険株式会社Peach Aviation株式会社の航空券のオプションのような形態で旅行保険を販売するとのことです。
「エース保険、Peach のウェブサイト上で旅行保険の販売を開始」
http://www.ace-insurance.co.jp/news/data/file_1_285.pdf
(エース損害保険株式会社 ニュースリリース 2012.6.18)
なるほど、これなら抱き合わせ販売にならないし、申込みの手間も少なく済みます。
ちょっと気になるのが、航空券購入者が保険契約者で旅行者が被保険者であることから、他人のための保険となるケースが往々にして発生する点です。被保険者同意をどうやって取り付けるのか分かりませんでした。
 
以下の記載もおや?と思いました。以前から欧米であったのなら、日本で今までなかったのは何故なのだろう?と思ったからです。インターネットで航空券の購入ということだけなら、何年か前から既にできましたから。

この旅行保険の募集方法は既に欧米の航空会社の間では広く普及している方法で、今後日本においても、特にインターネット系の旅行会社や航空会社において、普及していくものと思われます。

でも、確かに追随(マネ)するところが出てくると思います。