等級プロテクト特約の問題

いくつかの損保の自動車保険には、「等級プロテクト特約」が存在します。
これは、初回の事故に限り3等級ダウンのカウント事故であっても、それを等級すえおき事故とみなすという特約です。
詳しくは、東京海上日動のトータルアシスト(総合自動車保険),損保ジャパンのONE-Step(個人用自動車総合保険),日本興亜損保のカーBOX(くるまの総合保険)の約款(この3社の約款はダウンロード可能)に書かれています。
一方で、「等級プロテクト特約」が存在しない自動車保険もあります。私の知る限りでは、ダイレクト系損保の自動車保険は「等級プロテクト特約」を持っていません。
 
とりあえず、「等級プロテクト特約」の良し悪しは置いといて、この特約付帯契約の等級継承について考えてみます。
便宜上、
 A損保:等級プロテクト特約付帯可能な自動車保険を扱っている損保会社
 契約A:A損保の契約(等級プロテクト特約付帯)
 D損保:等級プロテクト特約付帯可能な自動車保険を扱っていない損保会社
 契約D:D損保の契約
とします。
契約Aを更改時に契約Dにする場合で、契約Aの期間内に「等級プロテクト特約」により等級すえおき事故とみなされた事故があった場合、契約Dのノンフリート等級はどうなるのでしょうか?
●契約Dのノンフリート等級は、契約Aのノンフリート等級と同じ
●契約Dのノンフリート等級は、契約Aのノンフリート等級−3等級
直感的に考えれば、前者です。後者とするなら、損保間の等級継承のルール自体が成り立ちませんし、それに等級ダウンなんかさせられては特約保険料の払い損ですし、特約を反故にされたことになるように思えます。
 
しかし、どうやら、これが各社マターで、必ずしも前者ではないようなのです。
明確に後者であることが明示されているのが、三井ダイレクトとアクサダイレクトです。
三井ダイレクトの重要事項説明書には以下の記載があります。

(注3)前契約に等級プロテクト特約が付帯されていても、弊社での事故件数の数え方には反映されません。


アクサダイレクトの重要事項説明書には以下の記載があります。

(注)前契約の事故件数の数え方は当社基準によります。他社で「等級プロテクト特約」等により、等級すえおき事故となる場合であっても、当社では原則としてカウント事故となります。詳細は、上記「<注1>事故件数について」の表をご覧ください。


また、ソニー損保の重要事項説明書もどちらにも適用できる書きぶりになっています。

※前契約に翌年の等級を下げない特約(等級プロテクト特約等)が適用されていた場合であっても、新契約の等級は弊社の定める方法により決定します。

 
しかし、これって実務がそれで回るのか疑問です。ダイレクト系損保は基本的に契約計上にあたって募集人の目によるチェックがされません。機械的なシステムチェックでスルーしてしまえばおしまいです。
契約者が重要事項説明書のこの注釈を見落として、ごく普通に等級すえおき事故1件と申告したらどうなるでしょう?等級交換制度でもおそらく普通に等級すえおき事故1件と扱われて次等級は前契約の等級と同じとされると思います。つまり、システムチェックは多分スルーします。
この予測が正しいなら、重要事項説明書に書かれていることどおりに運用するなら、等級すえおき事故のある契約について1件ずつ前契約の保険会社に照会をするなり契約者に確認するなりしなければなりません。これは余分なコストをかけたくないダイレクト系損保では、ナンセンスな話です。
 
理屈の上でも事務の面でも前者にすべきと思われますが、そうしない理由が私には分かりません。