チューリッヒの2つ目の自動車保険

多分2011年の年初くらいのことかと思いますが、チューリッヒ保険会社が新たな自動車保険…「ネット専用自動車保険」の販売を開始しました。
普通、リテール向けに販売する保険商品の場合、ニュースリリースを出し、世間への認知を図ります。しかし、このネット専用自動車保険はひっそりと販売開始され、今でも同社のサイトで知ることがほとんどできません。余程マイナーな種目とか適用対象が狭いニッチな市場向けとかなら話は別ですが、インターネットで販売する個人向けの自動車保険がそんなわけありません。ニュースリリースをしなかったのは、それなりに同社の意図があったと考えてよさそうです。
 
念のためですが、大分前からチューリッヒは個人向けに自動車保険を通信販売しています。それは、「スーパー自動車保険」です。
そして、今回私が取り上げた「ネット専用自動車保険」は、この「スーパー自動車保険」ではありません。本体は「スーパー自動車保険」で異なるペットネームをつけているというシロモノでもないようです。普通保険約款自体が別ものですから。
つまり、個人向け通信販売している「スーパー自動車保険」とは別に、個人向けにインターネット販売する「ネット専用自動車保険」を売り出したということです。
2つの自動車保険の違いは以下のリンク先に書かれています。わざわざ別のドメインをとってまで本体のサイトには載せないあたりも徹底しています。
「ネット専用自動車保険とスーパー自動車保険の違いについて」
http://net.zurich.jp/comparison.html
ここでは、保険料重視の人はネット専用自動車保険、補償重視の人はスーパー自動車保険と書いていますが、それは半分以上建前だと私は思っています。
なぜなら、それだけの違いなら、ネット専用自動車保険を懸命に隠す必要はなく、寧ろ「保険料の安い自動車保険を作りました!」と大々的にアピールして契約を集めようとするのが自然だからです。
 
余談ですが、スーパー自動車保険において、「通信販売に関する特約」では『所定の保険契約申込書にに所要の事項を記載し、当会社に送付すること』または『電話、ファクシミリ等の通信手段を媒体とし、当会社に対し契約意思の表示をすること』による申込みを規定しており、「インターネットによる契約に関する特約」ではインターネット通信を媒体とする申込みを規定しております。
おそらく、もともと「通信販売に関する特約」があったところに、インターネットでの申込みをするようになった際にその特約に組み込まずに、特約を新設し、それが今でもそのままになっているのでしょう。
現在、スーパー自動車保険の申込経路(継続を除く)について『紙の申込書の送付』『電話・FAX』『インターネット』の構成がどうなっているのか知りたいところです。
 
さて、本体のサイト( www.zurich.co.jp )からアクセスする手段を全く設けておらず、ニュースリリースすらしないネット専用自動車保険をどうやって売るつもりなのでしょうか?
おそらくですが、この保険の本当の意図は、保険料比較サイトで保険料の安さ重視で保険を選択する人をターゲットにすることにあるかと思われます。
だから、保険料を安くするために補償を限りなく薄くし、ロードサービスすら外しています。(セゾン自動車火災保険株式会社のおとなの自動車保険のようにロードサービスをオプションで付けるということもできません。)
そう言えば、以前のチューリッヒは業界最高水準のロードサービスを随分と宣伝していたのが、最近はほとんどロードサービスで宣伝しなくなったような気がします。まさか「スーパー自動車保険のロードサービスは業界最高水準だけど、ネット専用自動車保険にはロードサービスがありません!」と表立って言うわけにもいかないでしょうから当然かもしれません。
 
今のところ、この手法について特に大きな問題が起こっている様子はありません。少なくとも外部から見る限りはそうです。
しかし、「ネット専用自動車保険」契約の保有が多くなってきたときに、チューリッヒのサイトを見ても自動車保険と言えば「スーパー自動車保険」の説明しか書かれていないという状況はいずれ問題を起こしそうな気がします。