保険約款の方向性

前から思っていたことですが、普通保険約款や特約は難解です。私は保険業界の人間ですが、それでもアレは分かりにくいです。
特に、特約は単純に普通保険約款にぶら下がっているとは限らず、特約の特約みたいになっているものもあって、どの範囲を読めば知りたいことを得られるのかすら分かりにくいものもあります。
保険会社の意図として、一般の契約者に読んでもらうつもりはなかったとしか思えません。分かり易さよりも、裁判になったときに如何に勝てるかを重視して作ったというのが本音でしょう。
 
だからでしょうか、一般の契約者向けには「重要事項説明書」なるものを作成して、それをきちんと読んでもらって契約内容を理解してもらえということになっています。
しかし、それでも自動車の費用保険金,第三分野の保険金と立て続けに不払い問題が出たせいでしょうか。
「重要事項説明書」だけでなく、募集文書全般を理解してもらえるようにする方向の流れになってきているようです。
 
6月19日に以下のガイドラインが損害保険協会から出されました。
タイトルにあるとおり、保険約款についても対象になっています。
尤も、内々にはこれとほぼ同じ基準のものが以前からあって保険約款の認可時には金融庁のチェックが入っていたようなのですが。
 
「「保険約款および募集文書等の用語に関する ガイドライン」を策定【No08-006】」
http://www.sonpo.or.jp/news/release/2008/0806_11.html
「保険約款および募集文書等の用語に関するガイドライン
http://www.sonpo.or.jp/news/file/00341.pdf
(損害保険協会 ニュースリリース 2008.6.19)
 
昨年末には、以下のガイドラインも出ています。
あと、保険法が先月末に可決されたので、それを反映した募集文書に関するガイドライン等もきっと出てくるでしょう。
保険法の方は告知義務の部分が変わるので、募集文書だけでなく保険約款そのものに修正をすることになるかもしれません。
それらが出揃ったところで、募集文書…パンフレットやご契約のしおりやWebサイトを全面修正ということになりそうです。
 
「「保険約款のわかりやすさ向上ガイドライン」を策定【No.07-044】」
http://www.sonpo.or.jp/news/release/2008/0803_06.html
「保険約款のわかりやすさ向上ガイドライン
http://www.sonpo.or.jp/about/guideline/pdf/index/yakkan_guideline.pdf
(損害保険協会 ニュースリリース 2008.3.21)
 
誤解を招くことを恐れずに表現してしまうと、保険法は保険約款よりも優先されることになっているので、保険会社は保険約款で裁判に勝つことを考えるのではなく、募集行為全般で勝てるかどうかを考える必要があります。
なので、保険約款についても「裁判に勝つため」よりも「募集文書の1つとして分かり易く書かれていること」の方が重要になってくると思われます。
 
 
保険とはちょっと違うのですが、先日 某都銀のインターネットで取引できる口座を作ったので、その「ご利用マニュアル」と「規定集」が届きました。
「規定集」がちょうど保険の普通保険約款・特約にあたるもののようですが、その日本語の分かりにくさにはうんざりして、最後まで読む気にはなりませんでした。
確かに、論理的にはおそらく正しいでしょうし、平易な言葉で書かれています。
でも、それだけではダメなんですね。
それはそれで、とても参考になりました。