火災保険と借家賠

Yahoo!知恵袋の保険のカテゴリに以下の質問があり、ちょっと考えてしまいました。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1122991046

戸建てを新築し、火災保険35年分一括で入ろうか迷っています。しかし転勤等で賃貸に出す可能性があるのですが、その際借りた人から火災保険料という名目として実費相当額を徴収できるのしょうか?

 
一般に、建物の所有者がその建物に火災保険を付けます。被保険利益があるのは、建物の所有者だからです。その建物の戸室を他人に貸す場合でもリスクに備えたいのなら、やはり同様に建物の所有者はその建物に火災保険を付けておくべきです。
一方で、賃貸などで他人の建物に住んでいる入居者は、その建物に対して損害を与えて賠償責任を負ったときのために、借家人賠償責任保険等(以下、「借家賠」と書きます)を契約しておくべきです。
仮に、入居者が借家賠を契約した場合であっても、建物の所有者が火災保険を付保する必要性はなくなりません。なぜなら、借家賠で保険金が支払われるのは以下の場合だけであり、自然災害や入居者に賠償責任がない場合は、自分の負担になるからです。

当会社は、保険証券記載の被保険者の借用する保険証券記載の建物の戸室(以下「借用戸室」といいます。)が被保険者の責めに帰すべき事由に起因する次の各号のいずれかに該当する事故により、滅失、き損または汚損した場合において、被保険者が借用戸室についてその貸主に対して法律上の損害賠償責任を負担することによって損害を被ったときは、この特約条項に従い、保険金を支払います。
   (略)
東京海上日動の個人財産総合保険 借家人賠償責任拡張補償特約条項 第1条より)

 
さて、先ほど「入居者が借家賠を契約した場合であっても、建物の所有者が火災保険を付保する必要性はなくなりません」と書いたのですが、借家賠で補える範囲については建物所有者の火災保険の補償範囲から除外してもいいはずです。
補償範囲を一部除外すれば、保険料を節約することができます。火事のどさくさで焼け太りをしようというのでなければ、適正な契約内容にして損失分だけを補てんしようというのは当然の考えです。
 
しかし、ここで問題があります。私の知る限り、そのことに対応した火災保険が存在しないのです。
少なくとも、冒頭の質問者のケースでは、質問者の保険料負担を軽減する方法はないように思えます。
リテール分野の保険は、現在分かり易く簡潔化する流れが大勢で、こんな小難しい事案への対応は当面なされないと思われます。契約者および募集人の火災保険に対するリテラシーが向上するまでは、流れが変わることはなく、仕方ないかなと思っています。