分割割増について説明するとしたら?

当たり前・常識と思っていることでも、改めてそれは何故なのか?と問われると、即答するのが難しい場合があります。そんな類の質問で、Yahoo!知恵袋の保険のカテゴリに「何故分割にすると保険料が高くなるのか?」という主旨の質問がありました。
今回のケースは、単に説明が長いだけで、理屈が複雑なために即答が難しいという訳ではありませんが。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1322997663

私が現在加入している自動車保険では、保険料を口座振替の12分割にした場合、一括払いの保険料に分割手数料が5%上乗せされます。
  (中略)
どういう理屈でこういうことになるのでしょうか?いわゆる保険料の取りすぎには当たらないのでしょうか?

 
分割割増の根拠は、保険料が遅れて入金されてくることによる運用の逸失分と入金処理の手間と言えます。
生保会社ほどではありませんが、損保会社も保険料を運用します。分割でちまちまと財布にはいってくれば運用できる金額・期間が、一括の場合に比べて不利になるので、その分を保険料の割増とする必要があります。これが前者の金利による割増分です。ここは計算しやすい部分なので、後半で計算してみました。
後者については、単純です。本来は1回で済むものが、分割すればその分だけ余計に手間(=コスト)がかかるというだけのことです。ただし、この部分の割増分は、おそらくコストの要素をまともに積み上げて計算した資料はあっても表に出せないし、やや疑わしいものかもしれません。
あと、割増分を計算する上では、新契約社費の分を初回から充当するために実際に積める保険料がでこぼこすることを考慮すべきですが、そこまで踏み込む必要はなさそうなので割愛します。
 
金利による割増分は比較的簡単な数式によって計算することができます。
一括払の保険料1に対する分割払(12回)の保険料をPとします。それぞれの始期時点の現価が等しいことから、以下の等号が成り立ちます。
1=P×{1+v^(1/12)+…+v^(11/12)}
なお、v=1/(1+予定利率) です。
これをPについて解くと
P=1/{1+v^(1/12)+…+v^(11/12)}
 =(1-v^(1/12))/(1-v)
となります。
この結果より、金利による割増分は、(1-v^(1/12))/(1-v)×12-1 です。
昔は予定利率 5.0% で計算するのが一般的だったのですが、さすがに昨今ではそんな高い金利で運用などできないので、もっと低い利率で計算するのが普通です。
ここまでやれば、この金利による割増分がいくつになるのか Excel で簡単に出せます。
予定利率:5.0%の場合、2.25%割増
予定利率:4.0%の場合、1.81%割増
予定利率:3.0%の場合、1.36%割増
予定利率:2.0%の場合、0.91%割増
予定利率:1.0%の場合、0.46%割増