「保険検査マニュアル」の保険法対応(案)

保険法の施行日も2010年4月1日に決定し、ぼちぼちとあちこちで進めてきた保険法対応の準備が整いつつある感じがします。
4月30日のブログで触れましたが、既に「保険会社向けの総合的な監督指針」は保険法対応済みです。そして、今度は、「保険検査マニュアル」の保険法対応がなされようとしています。
「保険検査マニュアルの一部改定(案)の公表について」
http://www.fsa.go.jp/news/21/hoken/20090707-1.html
金融庁 報道発表資料 2009.7.7)

1.平成20年6月6日に公布された保険法の規定内容等を踏まえ保険会社向けの総合的な監督指針が改正(平成21年4月)されたことに伴い、以下のとおり改定を行います。
①告知ルールの整備
告知事項について、分かりやすく、必要事項を明確にした告知書を用いるなど、顧客が適切な告知を行うための措置を講じているか。
②他人の生命の保険契約等
従業員等を被保険者とする他人の生命の保険契約における被保険者の同意の確認について、被保険者に対して契約の内容を記載した書面の交付など被保険者が保険金受取人や保険金の額等の契約の内容を確実に認識できるような措置を講じているか
被保険者が未成年者である場合において、保険契約の不正利用を防止するための措置を講じているか
③支払時期
保険金等支払事務全般について迅速かつ適切に行われる態勢を整備しているか。
 
2.平成21年6月に改正された保険会社向けの総合的な監督指針において、統合リスク管理やストレス・テスト等についての着眼点が追加されたことに伴い、以下のとおり改定を行います。
①統合リスク管理態勢
統合リスク管理の方針の策定、統合リスク管理に関する部門の設置等統合リスク管理態勢の整備・確立に向けた具体的な取り組みを行っているか。
②ストレス・テストの実施
適切なストレス・シナリオを想定し、ストレス・テストを実施しているか
ストレス・テストの結果をリスク管理に関する具体的な判断に活用する態勢が整備されているか

↑は概要です。
実際に検査マニュアルの新旧対比表を見てみました。
 
告知に関して「分かりやすいこと」「必要事項を明確にしていること」の2点しかありません。概要と同じレベルでした。これは衆議院法務委員会附帯決議で求められたこととも合致するものです。
告知に関しては、金融庁がうるさく言わなくても手抜きをすれば困ることになるのは、保険会社ですから大丈夫かもしれません。なぜなら、告知義務違反による解除を適用するには、告知義務者(契約者・被保険者)の故意・重過失が要件としてあるからです。分かりにくい不明確な告知事項では、告知義務者に重過失を問えない可能性が高くなり、実質として告知義務違反が使えなくなってしまう恐れがあるからです。
 
それに対して、いろいろ盛り込まれているのが、他人の生命の保険契約等 に関するものです。こちらは、保険法では緩くした分だけ運用で厳格に縛ろうということになっていたかと思います。
生損保業界それぞれが自主的なガイドライン(「未成年者を被保険者とする生命保険契約の適切な申込・引受に関するガイドライン」と「傷害保険等のモラルリスク防止に係るガイドライン」)を作っており、それに従っているかということも検査で見られることになるようです。
 
保険金支払についても、保険法対応でかなり変わる部分です。
損保では標準的な支払日数は30日以内と現行約款では規定されていましたが、保険法対応約款では標準でないときはどんなときなのかとその場合の最大の支払日数を規定することになります。その規定した日数以内に保険金支払ができるよう態勢を整えることを検査マニュアルは求めています。
また、保険金請求書類や手続きを明確にするようにということも求めています。手続きでもたもたしたのを理由に支払が遅れることがないようにということかと思います。
ちょっと興味深いのは、重大事由解除時の連絡に関することが保険金支払の項に入っていることです。免責ではなく解除ですから、置く場所が違うんじゃないかという気がします。