みずほ銀行との保険契約と暴力団排除条項

株式会社みずほ銀行に対して、金融庁は2013年9月27日に次の認識を元に業務改善命令を出しました。

(1)提携ローン(注)において、多数の反社会的勢力との取引が存在することを把握してから2年以上も反社会的勢力との取引の防止・解消のための抜本的な対応を行っていなかったこと、
(2)反社会的勢力との取引が多数存在するという情報も担当役員止まりとなっていること、等
経営管理態勢、内部管理態勢、法令等遵守態勢に重大な問題点が認められた。
(注)顧客からの申込みを受けた信販会社が審査・承諾し、信販会社による保証を条件に金融機関が当該顧客に対して資金を貸付けるローンをいう。

「株式会社みずほ銀行に対する行政処分について」
http://www.fsa.go.jp/news/25/ginkou/20130927-3.html
尤も、このうち(2)については事実と相違があり、実際には頭取まで情報が行っていたことが早くも判明しております。当然、金融庁行政処分前にみずほ銀行事実認識をすり合わせをみっちりしているはずですから、金融庁はカンカンに怒っていると思います。
 
ここではそんなことを今更掘り下げるつもりはありません。今回のテーマは、それで保険会社はどうするのか?ということです。
 
損害保険業界では、つい最近、保険約款に暴力団排除条項の組み込みの検討を終え、一部の保険会社ではその検討結果を踏まえた保険約款になっています。
「損害保険業界における反社会的勢力への対応に関する基本方針」
http://www.sonpo.or.jp/about/guideline/hansha/
(一般社団法人日本損害保険協会
この件に関して、生命保険業界は、損害保険業界よりも2年ほど進んでいるので、ほとんどの生命保険の保険約款には暴力団排除条項が既に入っていることでしょう。
 
暴力団排除条項とは、保険契約者や被保険者等が反社会的勢力に該当する場合等には、保険契約を解除(重大事由による解除)できるというものです。
ここでいう解除要件にあたる「保険契約者や被保険者等が反社会的勢力に該当する場合等」とは、例示されている火災保険の保険約款では次のようになっています。

③ 保険契約者または被保険者が、次のいずれかに該当すること。
ア.反社会的勢力(注2)に該当すると認められること。
イ.反社会的勢力(注2)に対して資金等を提供し、または便宜を供与する等の関与をしていると認められること。
ウ.反社会的勢力(注2)を不当に利用していると認められること。
エ.法人である場合において、反社会的勢力(注2)がその法人の経営を支配し、またはその法人の経営に実質的に関与していると認められること。
オ. その他反社会的勢力(注2)と社会的に非難されるべき関係を有していると認められること。
     :
(注)暴力団暴力団員(暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者を含みます。)、暴力団準構成員、暴力団関係企業その他の反社会的勢力をいいます。

これは火災保険の保険約款例ですが、自動車保険や傷害保険や賠償責任保険においても解除の部分にはそれほど大きな違いはありません。免責の部分はかなり相違がありますけど。
 
みずほ銀行自身は、(注)でいう反社会的勢力には該当しないと思いますが、『イ.反社会的勢力に対して資金等を提供し、または便宜を供与する等の関与をしている』に該当する可能性が濃厚です。そうであるならば、みずほ銀行が保険契約者等になっている保険契約は暴力団排除条項に基づき、保険会社は保険契約を解除できることになります。
D&O保険,労働災害総合保険,社有車の自動車保険,持ちビル等の火災保険,福利厚生目的の生命保険や傷害・医療保険等が保険契約として存在することが考えられます。
 
ちなみに、暴力団排除条項導入前の保険約款だったら、解除は不要かという問題もあります。
保険法対応後の保険約款なら、重大事由による解除が必ず規定されているはずです。暴力団排除条項は、重大事由解除のバスケット条項の明確化であるにすぎないため、保険約款内に暴力団排除条項が存在しないことだけを理由に、解除しないという結論を単純に出すのは誤りかと思います。
 
それから、保険契約ではなく代理店委託契約にも暴力団排除条項はあるはずなので、そちらもどうするのか検討する必要があるでしょうね。