生保の複数手術時の手術給付金の支払い

大抵、手術給付金の支払い額は、手術1回につき入院保険金の特定の倍数となっています。なお、今回は生保の話です。
1日に複数の手術をした場合に手術給付金の支払い額はどのようになるのか?ということが先日あるブログで話題になりました。
そういうことは、約款にて規定されているはずですから、現在公開されている各生保の約款を確認してみました。
結果、各社に微妙な違いがあり、単純にどこも同じだと言えるものでもないようです。また、本当にこのとおりに運用されているのか疑問を感じる点もあります。
 

日本生命保険相互会社 総合医療特約(H20)

総合医療特約(H20) 第4条(給付金)第10項に以下のように規定されています。

被保険者が第1項第4号または第5号に規定する手術を同一の日に複数回受けた場合(1つの手術を2日以上にわたって受けた場合には、その手術の開始日をその手術を受けた日とみなします。以下、本項において同じ。)には、1つの手術についてのみ第3条および本条を適用して手術保険金(20倍)または手術給付金(5倍)を支払います。この場合、第1項第4号に規定する手術と第1項第5号に規定する手術を同一の日に受けたときには、手術給付金(20倍)を支払います。

同じ日に何回手術を受けても、その中で最も倍率の高い倍数を入院日額に掛けた金額であることが分かります。
 

明治安田生命保険相互会社 MYどっくプラス(5年ごと利差配当付新医療保険)

普通保険約款 第2条(給付金の支払い)第3項第1号に以下の規定があります。

被保険者が、時期を同じくして手術を2種類以上受けた場合には、第1項の規定にかかわらず、当会社は、手術給付表(別表3)に定める給付倍率の高いいずれか1種類の手術についてのみ手術給付金を支払います。

『時期を同じくして』というのはやや曖昧な表現ですが、少なくとも『同日』はこれに当たるものと考えられます。と言うことは、同じ日に複数種類の手術を受けても、入院日額にその中で最も倍率の高い倍数を掛けた金額ということになりそうです。
しかし、1番目の手術が完全に終了してから、同じ日に別の手術を開始するケースでは、それぞれ別個に手術給付金を算定すると解釈できます。
あと、どうしても気になるのは、『時期を同じくして』の時期がどのくらいなら同じとみなされるのか?です。この期間は要確認!だと思います。
 

SBIアクサ生命保険株式会社 カチッと医療(医療保険(定期型))

普通保険約款 第8条(給付金の支払に関する補則)第7項に以下の規定があります。

被保険者が、時期を同じくして2種類以上の手術を受けたときは、1種類の手術についてのみ、第7条(給付金の支払)の規定を適用して手術給付金を支払います。

SBIアクサ生命明治安田生命と同様に、同じ日に複数種類の手術を受けても、入院日額に10を掛けた金額ということになりそうです。(倍数は10倍固定のようです。)
しかし、1番目の手術が完全に終了してから、同じ日に別の手術を開始するケースでは、それぞれ別個に手術給付金を算定すると解釈できます。
やはり、『時期を同じくして』が気になります。ここは要確認!だと思います。
 

ライフネット生命保険株式会社 じぶんへの保険(終身医療保険(無配当・無解約返戻金型))

この保険は、手術給付金が入院日額の倍数ではなく、100,000円固定です。
普通保険約款 第15条(入院給付金、手術給付金)第5項に以下のとおり規定されています。

被保険者が同時に2種類以上の手術をあわせて受けた場合は、1回の手術を受けたものとみなします。また、同一の傷害および疾病を原因として1回の入院中に受けた2回以上の手術も、1回の手術とみなします。ただし、最終の手術(手術給付金の対象となる手術をいいます)を受けた日の翌日から起算して180日を経過した後の手術については、同一の傷害および疾病を原因としていても、新たな手術とみなします。なお、同一の疾病とは、医学上重要な関係にある一連の疾病をいい、病名を異にする場合(例えば、高血圧症とこれに起因する心臓疾患または腎臓疾患など)を含みます。

この手術給付金は入院時手術給付金です。従って、手術給付金が出るのは、入院の原因と手術の原因が同一であることを要しています。と言うことは、同日に支払対象となる2種類の手術を行うということ自体が実質ないのではないかと思います。
同日でない場合の複数回の手術の場合についても、きちんと規定されていて分かりやすいです。
いずれにせよ、複数回の手術によって、その分が毎回手術給付金として支払われるのではないことが分かります。
 

プルデンシャル生命保険株式会社医療保険

医療保険(60日型)・新医療保険(120日型)ともに同じ規定が普通保険約款 第2条(給付金の支払)にあります。

手術給付金
ただし、同時に2種類以上の手術を受けたときは、もっとも給付倍率の高いいずれか1種類の手術を受けたものとして給付金を支払います。

入院時手術給付金
ただし、同時に2種類以上の手術を受けたときは、いずれか1種類の手術を受けたものとみなし、また、手術給付金の支払われる手術と同時に受けたときは、入院時手術給付金は支払いません。

ここでは、『同時に』と規定されていますが、『同日に』ではありません。つまり、1回の手術で複数種類の手術を一遍にやった場合は、その中で最も高い倍率を入院日額に掛けた金額となります。しかし、1番目の手術が完全に終了してから、同じ日に別の手術を開始するケースでは、それぞれ別個に手術給付金を算定すると解釈できます。
 
生保の約款は、ライフネット生命保険株式会社SBIアクサ生命保険株式会社などのネット生保を別とすれば、ほとんど公開されていないので詳しく保障内容を見ることはできませんでした。
しかし、ここ数カ月で、日本生命保険相互会社明治安田生命保険相互会社プルデンシャル生命保険株式会社が約款の公開に踏み切ったため、少し状況が変わってきました。(その辺の話は、「ニッセイのわかりやすい約款解説」「明治安田生命の「保険がわかるサイト」」「プルデンシャルの e-約款」にて。)
やはり、自分で約款を見た方が安心できます。どこに曖昧さがあるのかも自分で見なければ確認できないこともありますし。