損保協会の保険法の案内

日本損害保険協会のサイトにて、来年4月に施行となる保険法についてのざっくりとした案内が掲載されています。
「2010年4月から、新しい保険法がスタートします!」
http://www.sonpo.or.jp/news/information/2009/0908_05.html
日本損害保険協会 協会からのお知らせ 2009.8.19)
中身は、既に知っていることばかりなので特にこれと言うこともないすが、やや言葉足らずだったり、正確さに欠けたりする記載もあるようです。
 
告知義務の項に↓の記載があります。

□ また、保険募集人による告知の妨害や不告知の教唆があった場合は、保険会社は解除できないとする規定が新設されました。

これは、保険法 第28条第2項第2号・第3号,第55条第2項第2号・第3号,第84条第2項第2号・第3号の「保険媒介者による告知妨害・不告知教唆の場合における告知義務違反に基づく解除の制限」が新規に保険法にて規定されたことを指していると思われます。
しかし、損保において保険募集人と言えば、契約締結権を持つ代理店の役職員や保険会社の社員であり、これらの者は保険媒介者ではありません。媒介代理による販売もないことはないのですが、損保全体から見るとごく一部です。
現行商法でも、締結代理店や保険会社社員が告知妨害・不告知教唆をした場合には告知義務違反に問えないという解釈だったかと思います。つまり、保険法で新設されたとは言えません。
説明のめんどくささからか、一緒くたにしたところで問題がないからか、意図は分かりませんが、正しい説明とは言い難いと思います。
なお、保険媒介者による告知妨害・不告知教唆があったなら、絶対に告知義務違反基づく解除ができないかというと、そうでもありません。そのことは法にも明記されていますし、「保険会社向けの総合的な監督指針 平成21年7月」IV-1-17(2)①イにも書かれています。
 
また、保険給付の履行期 の項に↓の記載があります。

□ 保険金の支払時期の規定が新設されます。
これにより、適正な保険金支払のために不可欠な調査に要する時間的猶予は保険会社に認められていますが、その調査に必要な合理的な期間が経過した後は保険会社は遅滞の責任を負うこととなります。ただし、保険契約者が保険会社の調査を妨げたりした場合については、この限りではありません。

保険給付の履行期については、標準は30日、標準以外については5類型を想定して60〜180日で定める約款がほとんどではないかと思われます。
そして、そのあらかじめ定めた履行期を超えてしまった場合は、保険金に加えて延滞利息を保険会社は支払うことになります。遅滞の責任と↑で書いているのはその事でしょう。
そして、↑のただし書きは、調査妨害などで遅延した場合は調査妨害した期間は算入しないということを指しているのだと思われます。
「この限りではありません」では、分かりにくいと思います。損保協会の「保険約款のわかりやすさ向上ガイドライン」5(1)①イでも「この限りではありません」は可能な限り使用しないことと定めているのに、灯台下暗しです。
いずれにせよ、言葉足らずな感があります。
 
一方で、これまでにあまり具体的に出てこなかったけど、このリリース資料で一部について公開された事もあります。
それは、他人を被保険者とする契約に関する規定の新設の項に記載されている↓の部分です。

□ 他人を被保険者とする傷害疾病保険契約において、被保険者がいったん同意をしても、その後に保険契約者や保険金受取人との間の信頼関係が破壊された場合や、同意の基礎となった事情が著しく変更した場合には、被保険者からの解除請求を認める規定(被保険者離脱制度)が新設されます。原則として被保険者から保険契約者に申し出ていただくことになりますが、一定の条件の下、保険会社でお申し出を受け付けることができる場合もあります。

ここに書かれている「被保険者離脱制度」に注目です。
これは、契約者≠被保険者の場合に、一定の条件を満たす場合に限って、被保険者が直接保険会社に契約の解除または自分を被保険者から外す事を要求することができる仕組みです。
生保に比べれば、保険期間の比較的短い損保において、どの程度この制度が利用されるのか不明ですが、法対応による新たな制度であることには違いありません。