平成21検査事務年度検査基本方針

8月7日に金融庁サイトにて、平成21検査事務年度検査基本方針等に関する資料が公表されました。
「平成21検査事務年度検査基本方針及び検査基本計画について」
http://www.fsa.go.jp/news/21/20090807-1.html
金融庁 報道発表資料 2009.8.7)
まずは、「平成21検査事務年度検査基本方針」について、「平成20検査事務年度検査基本方針(10月28日改定)」と比較しつつ、中身を見てみました。
項立てはかなり手を入れていますが、項目そのものは昨年度版を踏襲しているものが多いです。変更されている部分は、実際の検査時に特に意識して見られる可能性が高いものと思われます。
 
昨年度版になかった項目として、「4.顧客保護・利用者利便の向上」として、「(1)顧客保護等」に↓の一文がありました。

金融サービスが多様化・複雑化する中で、金融機関においては、顧客保護を図る態勢を整備する必要がある。従来より、預金者、保険契約者、有価証券の投資者、ローンの借り手等の保護を担っている金融庁では、顧客保護等に関して、顧客情報を厳格に管理する態勢や優越的地位の濫用を防止する態勢が整備されているか、利益相反を管理する態勢の整備・確立に向けた取組みが行われているか、といった点に加え、以下の点を重点的に検証する。その際、必要に応じて、消費者行政を一元的に推進する役割を果たすことが期待されている消費者庁とも適宜協力していく。

この中身の細分化した3項目は昨年度にもあるものなので、冠を付けただけという見方もできますが、利益相反消費者庁というキーワードは明らかに今年度の新しいものと言えます。
また、これと同種のものとして、その次の「(2)利用者利便の向上」も追加と言って良いかと思います。
それから、住宅ローンや中小企業の債務に関する事項に追加がありますが、保険会社とはほとんど関係ないと思われるので端折ります。
 
丸々追加になっているのが「III.各種検査の基本的枠組み」です。このうち、保険会社に直接関係するのは、↓です。

1.オン・オフ一体的なモニタリング
・企画・情報分析室(検査局)スタッフの監督局併任、リスク分析参事官室(監督局)スタッフの検査局併任等、検査局・監督局の連携強化により、オン・オフ一体的なモニタリングを実施する。
・その際、まずは個別金融機関のリスクをより的確に特定する。その上で、金融システムそのものについて持続的かつ安定的に健全な発展が見込めるかというマクロ的視点からの洞察に努める。
 
4.保険検査
・企画・情報分析室に情報分析官を設置し、事前情報分析機能の充実を図る。
・監督局と協働でオフサイトヒアリングを実施する。
・保険検査マニュアルの全面改定に向けた作業を開始する。

ここで、保険検査マニュアルの全面改定 を謳っていますが、その内容はちょっと気になるところです。
 
「IV.検査重点事項」の「2.リスク管理態勢の整備」もかなり見直しが入った部分です。これも保険会社を対象とした項が設けられています。

(4)保険会社におけるリスク管理態勢
保険会社を取り巻く内外の経済・金融環境が大きく変動している状況や、統合リスク管理やストレス・テストの実施等に関する保険会社向けの総合的な監督指針及び保険検査マニュアルの改定の趣旨を踏まえ、保険会社の検査にあたっては、本検査事務年度は、引き続き、資産運用リスク、保険引受リスクや責任準備金の管理態勢が整備されているか等について重点的に検証するとともに、保険会社における統合リスク管理態勢の整備・確立に向けた取組みが行われているか、ストレス・テストを実施・活用しているか、等についても検証する。

 
別添の「金融検査におけるベター・レギュレーションに向けた取組み(アクションプランⅡ)」の改定もほぼ全体に黄色いマーカーが入っていて、大幅な手直しをしたことが窺えます。
そのマーカー部分を見ると、情報の幅広い収集,評価・検証の内容や項目の見直し,検査する側(金融庁)の要員のレベルアップの3点に大きく分けられそうです。
そこから思ったのは、金融庁自身が現状の検査方法に対して足らない部分があることを意識しており、その部分の強化をしたいと考えているのではないかということです。
実際、昨年度はAIGの問題に関しても大和生命の破綻に関しても、金融庁の対応は後手後手に回り、契約者を主とする一般利用者に対して役立つことはほとんど何もできなかったと言えます。破綻する前に危機的な状況を察知し、適切に監督することによって、破綻を防ぐ/破綻による契約者不利益が生じないようにするのは金融庁の役割の1つだと思います。
今年度も経済状況はまだ回復したと言えないので、昨年度の轍を踏むことがないように意識しているものと思われます。
 
「平成21検査事務年度検査基本計画」には検査対象予定の会社数が記載されており、ほぼ去年並みのようです。
これを見る限りでは、少額短期保険業者はまだ検査対象の予定にないようです。